参考になるのは、前述のウィスラー&ブラッコムである。2010年バンクーバー冬季オリンピックの開催地で、二つの山に200以上のコースと39のリフト・ゴンドラがあり、スノーボードパークやハーフパイプ、キッズパークなども充実している巨大なスキーリゾートだ。山の上には初心者からエキスパート、子供から高齢者まで、すべてのスキーヤーが楽しめる多彩な斜面が常に最高の状態に整備されている。
そしてアフタースキーは、高級ホテルやコンドミニアム、一流レストラン、バー、ディスコ、映画館、様々なショップなどが集積した麓の町ウィスラー・ビレッジで快適に過ごせる設計になっている。そういうまとまったコンセプトで一体的な開発・運営ができているのは、ハミルトン島やヘイマン島もそうだが、リゾート全体を一つの会社が経営しているからだ。
一方、越後湯沢は一つひとつのリフトやゴンドラ、宿泊施設、飲食店などの経営がバラバラでまとまりがない。だから駅前商店街と同じで1軒ずつシャッターが下りていくし、麓の町はスキー場に行き帰りする時の単なる通過点でしかないから寂れる一方だ。これは他のスキー場も同様である。
もう一つ、日本のスキー場に共通する問題は、日本が貧しかった時代のままで、いわば「大学スキー部の合宿用」に造られていることだ。高級ホテルや一流レストランは少なく、旅館、民宿、ペンション、食堂、居酒屋が中心だ。リフトを乗り継ぐ時も、えっちらおっちら斜面を登らなければならないが、そんなスキー場は海外では見たことがない。世界の有名スキーリゾートは、すべて斜面を滑り降りて乗り継げるようになっている。
要するに、世界のスキー場は富裕層や高齢者、家族連れに優しいコンフォタブルなリゾートとして造られているのだ。それと同じようなものに、東京から近くて12月から5月末まで滑ることができる越後湯沢を造り替えれば、アジア随一のスキーリゾートになる可能性もあると思う。
※週刊ポスト2014年6月13日号