その現場はあまりにも凄惨だった。
「午後6時ちょっと前だったと思います。上の階のほうから、『やめてよ~』『いやだよ~』『助けて~』と、子供が泣き叫ぶ声が聞こえてきて、そこに大人のうめき声のようなものが入り交じっていました。声がしなくなった瞬間、ビシャッと、コンクリートに何かが叩きつけられたような音が、続けざまに3回聞こえたんです」(マンションの住人)
千葉県八千代市の14階建てマンションの最上階から母子4人が飛び降りたのは、6月14日のことだった。
死亡したのは、市内に住む主婦・神津恭子さん(35才)、神津(こうづ)さんの長男で小学2年生の晴慶くん(7才・はるみち)、長女で小学1年生の寿美花ちゃん(6才)、次男の颯佑くん(2才・そうすけ)の4人。14階の通路には恭子さんのものとみられるバッグが置かれており、子供たちを道連れに無理心中を図ったものとみられている。
「お母さんは玄関の入り口に、子供2人は玄関の屋根の上に落ち、いちばん小さな男の子は植え込みの木に引っかかっていたそうです。音が3回しか聞こえなかったのは、そのためだったんですね…」(前出・マンションの住人)
恭子さんは現場から2kmほど離れたマンションに、夫(32才)と子供3人とともに5人で暮らしていた。夫は現場マンションの最寄り駅近くで美容室を経営し、恭子さんは子育てのかたわら、店の手伝いをしていた。取材を進めると、恭子さんに対する周囲の評判はいいものばかりだった。
「引っ越して来られたのは3年ほど前だったと思います。奥さんは人柄がよくて礼儀正しい人でした。マンション前の小さな公園でよく子供たちを遊ばせていましたね。上の男の子とサッカーボールで遊んだり、下の女の子のブランコを押してあげたりしていて、とてもやさしいお母さんだなと思っていました」(近隣住民)
「見た目はすごく華奢なかたでしたけど、だからといって弱々しい感じではありませんでした。3人の子供たちを一生懸命育てている頑張り屋のお母さんでしたよ」(別の近隣住民)
家事・育児、夫の店の手伝いに追われながら、子供の小学校のPTA活動にも積極的に参加していたという。ある近隣住民は、恭子さんが亡くなる前日に言葉を交わしていた。
「夕方ぐらいだったと思います。保育園のお迎えなのか買い物なのかはわかりませんが、車でひとりで出かけようとしているところでした。私が『行ってらっしゃい』と言うと、彼女は『行ってきます』と元気な声で笑顔で返事をしてくれたんです。悩んでいるようにはまるで見えなかったし、まさか次の日に、あんなことになるなんて…。日頃からお茶や食事に誘って、相談相手になってあげられれば痛ましい結果は避けられたのかも、と思うと切なくて…」
そう言って近隣住民は言葉を詰まらせた。周囲には明るく元気そうに見えていても、恭子さんはひとり悩み苦しんでいたのだろうか。
※女性セブン2014年7月17日号