近年、洪道場で修業した若手棋士の活躍がめざましい。17歳の一力遼七段はグロービス杯(20歳以下の世界戦)で優勝。また、棋聖・名人・本因坊のビックタイトルを獲得するには、それぞれの挑戦者を決めるリーグ戦に勝ち上がって入り、そこでトップを取って挑戦者にならなければならない。
リーグ戦はそれぞれ10人前後しか入れず、「一流棋士の証」で「黄金の椅子」とも呼ばれている。一力七段は棋聖戦のリーグ入りを、史上最年少の16歳9か月で果たした。一力七段は現役の高校2年生。彼は迷いなく進学を決めたそうだが、里菜さんも迷いなく高校に行かなかった。「もともとその予定だったので。囲碁一本でいきたかった」。
里菜さんは小学生のときから囲碁棋士をやっているので、お金を稼ぐようになってもう4年目。毎年の収入は波がある。「勝ちが多ければ収入が増え、負けが込むと減ります。上下が激しい」。
さてさて、会津中央病院杯の優勝賞金は700万円。何かと天引きされるが、それ相当の金額がもうすぐ通帳に振り込まれる。
「そんな大きな金額が一気に入ってくるのは初めてなので、たぶん貯金しますが、プチ贅沢はしようかなと思っています」と里菜さん。普段買えないブランドの服を買いたいという。「棋士として、服装は大事かなと思って」。やはり、何をするにも囲碁が根底、中心にあるのだ。
ここまで一途に没頭できるものが小学生のうちに見つかっているなんて、なんともうらやましい。また、好きであっても夢が必ずかなうわけではない。実力も運もある里菜さんは、本当に幸せそうだ。プロになりたてのときの目標、「女流のタイトルをとりたい」は、達成された。さて次は?
「今はまだ実力不足ですが、将来的にはリーグ戦に入りたい」と里菜さん。達成できれば、これも史上初の「女性リーガー」誕生となる。そう遠くない将来に、吉報をお伝えできるようがんばってほしい。
【藤沢里菜/ふじさわ・りな】
1998年9月18日生まれ。埼玉県出身。藤沢秀行名誉棋聖門下。2010年プロ入り(女流棋士特別採用最年少記録)。2013年二段昇段。2014年第1期会津中央病院杯で初タイトル獲得。日本棋院東京本院所属。
●取材・文/内藤由起子(囲碁ライター)
●編集/田中宏季
●撮影/山崎力夫