--笑っちゃいけないんでしょうけれど、その理不尽さが野球部以外の者には面白いんです(笑) 「甲子園あるある」はありますか? 僕が思いついたのは《控えのキャプテンが伝令に出てきたとき、作り笑顔がデカイ》《初出場の私学で試合前のベンチ前で謎の儀式をするところがある》です。
クロマツ:あーありますねえ(笑)甲子園ではまず「熱闘甲子園」(注・テレビ朝日系で毎晩放映するその日の甲子園まとめ番組)よりも先に気になるランナーコーチを見つけ出すことですかね。いい笑顔をしているムードメーカーの控えとか、伝令で内野陣が集まったときに行われるキメポーズなどは必ずチェックしています。あとは「あるある」風にいうと、
《「笑顔」とか「楽しく」とか「元気よく」とかを全面に掲げて闘う高校はやっぱりすぐ負ける》
《エラーした選手のところにすぐまた打球が飛ぶことは野球では良くあるが、甲子園ではそれ以上にもっとある》
《3年生の代打より2年生の代打の方が振ってくる》
《テレビ中継のアルプスレポートでカメラに抜かれる女の子は、必ず朝倉南ラインの女子》
などですかね。よーく観察していると、絶対おかしな法則が見つかるはずです。それを見つけるのが楽しみです(笑)
--改めて、クロマツさんにとって高校野球部の魅力はなんですか。
クロマツ:基本的には楽しくて笑える日常なんで、それを面白おかしく描いていくつもりです。でもなぜ彼らの行動や言動のいちいちが面白いかと言うと、それはやっぱり本質的に真剣だからだと思うんです。9人しか試合に出れず、20人しかベンチに入れず、負けたら終わりの一発勝負の戦いをするというシビアな世界が背景にあるからだと思うんです。僕の作品でも野球部のリアルを描ききるうえでは哀愁は切っても切れないものなので、今後もそこらへんもどんどん掘り下げていくつもりです。