子供たちのスマートフォンの使用を制限しようという動きが強くなっている。きっかけは、LINEやメールによる子供同士のトラブルが相次いで起きていることだ。その先駆けとなった愛知県刈谷市では、市内の小中学校がPTAと連携し、午後9時以降は児童生徒のスマホなどを保護者が預かるように呼びかけている。親による子供のインターネットの監視はどこまですべきなのだろう。
「監視の前に、やることがある」と話すのは、タレント、エッセイストの小島慶子さん(42才)。小学生の息子が2人いる。
「インターネットに接する前に、危険性を知り、どういう使い方をすれば安全かを、親子できちんと話し合うことです。もしそれをせずにスマホを渡し、ただ監視するのなら、子供と向きあって話をする面倒くささを、親が回避しているだけ。子供のネットリテラシーも高まらない。自分が手間を省いているだけでは?」
リスクや落とし穴を子供が理解すれば、自ずと使用頻度は減るというわけだ。教育評論家の親野智可等さん(56才)は、子供も納得できるルール作りが重要と指摘する。
「ただ取り上げるのでなくて、まずは子供の言い分を共感的に聞いてあげること。そのうえで、心配している気持ちを上から目線ではなく、対等な立場で心を込めて伝え、『やりたい放題というわけにもいかないから、ルールを決めようよ』と持っていく。あとはお互い交渉して納得ずくの着地点を見つけ、ルールを明文化する。一方的なルールではなくて、一緒に作ったルールなら、子供も『しっかり守らなきゃ』となります」
スマホを取り上げても問題の解決にならないのでは、と疑問を投げかける声もある。坪田信貴さん著『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』の主人公・さやかさん(26才)の母親、美子さん(仮名、49才)はこう語る。
「いじめがあるからとLINEを禁止しても、LINEに代わる新しい何かで問題が起こりますから、イタチごっこになるだけでしょう。子供がいじめの被害者になっていても加害者になっていても、そこには必ず何かしらのSOSや異常があるはず。それを早い段階で見つけて、叱るのではなく、なぜそうしたことになったのか、かかわり方を今一度省みる必要があると思います」
世間では、「子供の世界が急激に見えにくくなった」、だから「子育ては難しい」といわれている。しかし、そうした風潮こそが間違いだと思想家の内田樹さん(63才)は言う。
「子供の世界はいつだって陰湿で残酷なところがあります。いじめも昔からありました。スマホがあろうがなかろうが、子供の世界が親からは見えないのは、今も昔も同じです。だから、むやみに不安がる必要はありません。常識で判断すればいいことです。常識の許容範囲はけっこう広いから、だいたいこんなもんだろうというところでやっていけばいいんです。唯一の『正しい育児法』を探し求めて浮き足立つのがいちばんいけない」
したがって、内田さんもスマホの監視はNOの立場だ。
「もし自分の子供の頃に親にそんなことをされたら、どう感じたか、それを想像すれば答えはすぐに出るはずです。誰だって勝手に日記や私信を読まれたら嫌でしょ。スマホだって同じですよ。そんなことをしたら、子供は二度と親を信用しなくなりますよ」(内田さん)
※女性セブン2014年8月14日号