ビジネス

消費者が変える日本経済 買い控えで消費増税阻止も可能?

謎の美女が表紙を飾る『octo∞』

 20才当時の加賀まりこ(主演映画『月曜日のユカ』でのワンシーン)の表紙が印象的な50才以上の女性をターゲットにした新雑誌『octo∞』(オクトアクティブエイジング)では、ファッション、グルメ、経済など、大人の女性が知っておきたい様々な情報を発信している。

 そのなかでも経済の話となると、よくわからないと敬遠してしまっている50代以上の女性も少なくないはず。景気にしたって、その影響を受ける側にいるだけと思っているのでは? でも、実際はそうではない。50代以上の女性の行動が日本経済を決定しているのだ。『octo∞』では、投資銀行家のぐっちーさんが、50代以上の女性が経済に与える影響を解説。以下、抜粋して紹介する。

 * * *
 日本は貿易立国で、輸出によって国が成り立っているから円安のほうがいい、などと新聞でよく書かれていますね。しかし、実際は、輸出はGDPの15%に過ぎず、60%は皆さんの消費で成り立っているのです。極論ですが、もし輸出がゼロになってもGDPが15%減るだけですが、皆さんが一銭も消費しなくなってしまったら、日本という国はたちどころになくなってしまう。つまり、皆さんのお金の使い方こそが日本経済そのものともいえるのです。

 実際、皆さんの消費動向は日本の産業構造に大きな変化を与えてきました。高度成長期の日本では、ほぼすべての国民が、冷蔵庫やテレビ、そして住宅を買い、車もいつかはクラウン、とばかりにより高級な車種に買い替え続けました。この消費形態だと、みんなが一斉に同じものを欲しがるわけですから、同じものを大量につくれる大企業が圧倒的に優勢に立ちます。

 では、今の皆さんの消費形態はどうなっているでしょうか。わかりやすく食生活だけ見てみても、ドーナツからポップコーンまで、これまで日本では流行らなかった新たなアメリカンスナックが次々と上陸し連日大行列。同じくアメリカからはスターバックスやタリーズが来て、今やそれには飽き足らず、個人ブランドのシアトル・カフェまで現れるようになりました。こうなるとカフェ文化そのものの輸入ですよね。さらに、コンビニのお菓子までが、杏仁豆腐やロールケーキなど、多様かつ本格的に! この多様性に対応するには、1つの商品を大量につくって宣伝して売る、という従来のスタイルでは難しく、生産者側はいろいろな嗜好に合わせた個別の対応を迫られることになります。これを専門用語でロングテール現象、というのですが、実はこの現象をつくり出す多様な消費者というのが、まさに皆さんのことなのです。

 今やテレビが家にない、という人は珍しくなく、大手家電メーカーの不振も理解できますね。家電量販店、大型スーパーも同じような文脈でとらえることができます。

 これを逆から見てみると、意図的かつ能動的に消費者から発信をして、政府や企業の形を変えることさえ不可能ではありません。たとえば消費税。もし今回の増税をきっかけに皆さんが思い切り買い物を控えれば、前述のとおりGDPの60%を占めるのは消費なので、困るのは企業であり、さらに税収が下がった国になります。当然企業は政府に対し、こんなときに消費税を上げるから売り上げが落ちた、と猛烈に反発するでしょう。こうなると企業スタイルはおろか、国の税制すら消費者の力が変えてしまうかもしれません。

 さて、消費者が多様化すると小回りの利く中小企業が俄然有利になってきます。従業員1万人を雇用するのには相当な規模の売り上げが必要ですが、多様な需要に対応する従業員10人程度の会社が1000社生まれればその雇用をカバーすることができます。今の消費多様性から見ると、これは必ずしも不可能な数字ではないでしょう。車のような生産に大型設備が必要なものは当面大手に限られますが、これにしても車に乗らない、という選択肢があるのです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

オーナーが出入りしていた店に貼られていた紙
「高級外車に乗り込んで…」岐阜・池田温泉旅館から“夜逃げ”したオーナーが直撃取材に見せた「怒りの表情」 委託していた町の職員も「現在もまだ旅館に入れない」と嘆き
NEWSポストセブン
記者の顔以外の一面を明かしてくれた川中さん
「夢はジャーナリストか政治家」政治スクープをすっぱ抜いた中学生記者・川中だいじさん(14)が出馬した生徒会長選挙で戦った「ものすごいライバル候補」と「人心を掴んだパフォーマンス」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博内の『景福宮』での重大な疑惑が発覚した(時事通信)
《万博店舗スタッフが告発》人気韓国料理店で“すっぱい匂いのチャプチェ”提供か…料理長が書いた「始末書」が存在、運営会社は「食品衛生上の問題はなかった」「異常な臭いはなかった」と反論
NEWSポストセブン
63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志さん
《63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志》不良役演じた『ビー・バップ』『スクール☆ウォーズ』で激変した人生「自分の限界を超える快感を得ちまった」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
サッカー界のレジェンド・釜本邦茂さんが「免許返納」密着取材で語っていた「家族に喜んでもらえることの嬉しさ」「周りの助けの大きさ」
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがニューシングル『Letter』をリリース(写真・左/AFLO、写真・右/Xより)
羽生結弦の元妻のバイオリニスト・末延麻裕子さん、“因縁の8月”にニューシングル発売 羽生にとっては“消せない影”となるのか 
女性セブン
中学生記者・川中だいじさん(14)が明かした”特ダネ”の舞台裏とは──
「期末テストそっちのけ」中学生記者・川中だいじさん(14)が抜いた特ダネスクープの“思わぬ端緒”「斎藤知事ボランティアに“選挙慣れ”した女性が…」《突撃著書サイン時間稼ぎ作戦で玉木氏を直撃取材》
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
メキシコ五輪得点王・釜本邦茂さんが語っていた“点取り虫”になる原点 “勝負に勝たなければならない”の信念は「三国志」に学んでいたと語る
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴行動画に批判殺到の花井組》社長らが書類送検で会社の今後は…元従業員は「解体に向けて準備中」、会長は「解体とは決まっていない。結果が出てくれば、いずれわかる」と回答
NEWSポストセブン
雅子さまのご静養に同行する愛子さま(2025年8月、静岡県下田市。撮影/JMPA) 
愛子さま、雅子さまのご静養にすべて同行する“熱情” そばに寄り添う“幼なじみ”は大手造船会社のご子息、両陛下からも全幅の信頼 
女性セブン
猫愛に溢れるマルタでは、動物保護団体や市民による抗議活動が続いているという(左・時事通信フォト)
《深夜に猫地面にたたきつける動画》マルタで“猫殺し”容疑で逮捕の慶應卒エリート・オカムラサトシ容疑者の凶行と、マルタ国民の怒号「恥を知れ」「国外に追放せよ」
NEWSポストセブン
大神いずみアナ(右)と馬場典子アナが“長嶋茂雄さんの思い出”を語り合う
大神いずみアナ&馬場典子アナが語る“長嶋茂雄さんの思い出”「こちらが答えて欲しそうなことを察して話してくれる」超一流の受け答え
週刊ポスト