スポーツ

NHK名物アナ小野塚康之氏 「甲子園実況28年」の極意を語る

グラウンドで取材をする小野塚康之さん

 11日から開幕予定の夏の甲子園で、ひとりの人物の「動向」が高校野球ファンの間で注目を集めていた。NHKアナウンサー、小野塚康之さん(57歳)である。その良い意味でNHKらしからぬ熱い試合の実況は、ネットに「まとめサイト」が出来るなど、多くの視聴者の心をつかんでいる。昨夏は異動の関係で実況担当を外れたが、今年は復帰、さっそくネットで歓迎の声が上がった。小野塚さんに「高校野球中継の心」を聞いた。(取材・文=フリーライター・神田憲行)

 * * *
 開幕前の8月6日、出場校が順番に甲子園球場で練習する「甲子園練習」の現場にさっそく小野塚さんの姿があった。記者らと同じようにグラウンドに降りて盛んにメモを取っていた。

--どうしてスタンドからでなくグラウンドに降りて見学されているんですか。
小野塚:ほら歳を取ると選手とだんだん年齢差が広がっていくでしょう。その差を少しでも縮めたい。そのために選手と少しでも近いところで見ることが必要だと考えています。

--メモを取られている内容は?
小野塚:各選手の特徴です。僕はNHKから配られる学校や選手の資料は最初は見ないんですよ。自分の目でまず確かめて、「この選手が1番打者なのかな」「背番号10だけどこの投手が実質エースだろう」とか考えるわけです。あとで資料と照らし合わせて、自分の観察力が合っているのか、ずれていたのか、まずその感覚を確かめたい。

--記者は私も含めてポロシャツなど軽装なのに、小野塚さんだけこの暑い中でジャケットでネクタイというスーツ姿でいらっしゃる。なにか意味はあるのですか。
小野塚:だって選手はユニフォームという「正装」ですから。僕も敬意を込めて、せめて彼らと同じ暑さを感じようと。高校生といえども取材相手には真摯な態度でいたい。

 小野塚さんのNHKの入局は1980年。中学高校と野球部のキャプテン捕手でならし、大学を卒業するときも「野球に携われる仕事」でアナウンサーを選んだという。

小野塚:とにかく野球関係の仕事ということで、スポーツメーカーなども考えたんですが、人の勧めなどもあってNHKを受けたら受かっちゃった。普通アナウンサーは放送研究会出身などが多いのですが、僕は違います。今も自分のことをアナウンサーというより、「日本野球株式会社の広報担当者」のつもりでいます。

 NHKのアナウンサーは最初は地方局に赴任する。小野塚さんの初任地は鳥取放送局。そこでさっそく、小野塚さんの高校野球伝説が始まる。

小野塚:鳥取で地方大会に参加する県下の高校を全て取材で回りました。20校ぐらいしかなかったのでできたことなんですが、田園のなかで練習している学校もあれば、山間にグラウンドがある学校もありました。僕は東京育ちなので、そういう環境の中でプレーをしている選手たちを見るのが新鮮でね。また高野連の組織についても勉強して、プレーヤーから伝える側になる意味で財産になりましたよ。

--甲子園での最初の実況担当はいつですか。
小野塚:1986年の選抜で拓殖大学紅陵対洲本です。

関連キーワード

関連記事

トピックス

復興状況を視察されるため、石川県をご訪問(2025年5月18日、撮影/JMPA)
《初の被災地ご訪問》天皇皇后両陛下を見て育った愛子さまが受け継がれた「被災地に心を寄せ続ける」  上皇ご夫妻から続く“膝をつきながら励ます姿”
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン
武蔵野陵を参拝された佳子さま(2025年5月、東京・八王子市。撮影/JMPA)
《ブラジルご訪問を前に》佳子さまが武蔵野陵をグレードレスでご参拝 「旅立ち」や「節目」に寄り添ってきた一着をお召しに 
NEWSポストセブン
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
オンラインカジノの件で書類送検されたオコエ瑠偉(左/時事通信フォト)と増田大輝
《巨人オンラインカジノ問題》オコエ瑠偉は二軍転落で増田大輝は一軍帯同…巨人OB広岡達朗氏は憤り「厳しい処分にしてもらいたかった。チーム事情など関係ない」
週刊ポスト
1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
国技館
「溜席の着物美人」が相撲ブームで変わりゆく観戦風景をどう見るか語った 「贔屓力士の応援ではなく、勝った力士への拍手を」「相撲観戦には着物姿が一番相応しい」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【20歳の女子大生を15時間300万円で…】男1人に美女が複数…「レーサム」元会長の“薬漬けパーティ”の実態 ラグジュアリーホテルに呼び出され「裸になれ」 〈田中剛、奥本美穂両容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
前田亜季と2歳年上の姉・前田愛
《日曜劇場『キャスター』出演》不惑を迎える“元チャイドル”前田亜季が姉・前田愛と「会う度にケンカ」の不仲だった過去
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
NEWSポストセブン