ビジネス

部下なし女性管理職の増加は「職場が不幸になるだけ」と識者

「女性活用は数字に拘りすぎるとうまくいかない」と中川美紀さん

 安倍政権がゴリ押しする成長戦略の目玉のひとつに、「女性管理職の増加」がある。

<6年後に指導的地位に占める女性の割合を30%にする>旨の法案を秋の臨時国会に提出し、企業などに女性の積極登用を促そうというのだ。

 8月7日より厚生労働省の審議会で法案成立に向けた本格的な議論が始まったようだが、政府の大号令とは裏腹に、企業現場は困惑するばかり。

「同じ規模でも業種や部門によって女性が多く必要な会社もあれば、男性でないと務まらないハードワークの会社もある。しかも、結婚や出産などを控えた女性の働き方も変えずに、国のノルマに従って“名ばかり管理職”や“部下なし管理職”に据えれば、企業経営の自由度を奪う結果につながる」(大手建設会社の人事担当者)

 もっとも、女性に限らずいくら能力や実績のある社員でも、強いリーダーシップが求められる管理職には向き不向きがあって当然だろう。

 先ごろ一般社団法人の日本経営協会が発表した調査結果でも、女性管理職のうち「気遣い・心遣いに自信がある」と回答した人が66.0%にのぼった一方で、「指導力・管理統率力に自信がある」と答えた割合は30%台しかいなかった。

『<女性職>の時代――ソフトインテリジェンスの力』(角川ONEテーマ21新書)などの著書があるビジネスアナリストの中川美紀さんは、「一律に女性管理職の数値目標を掲げて強引に進めていくことは、企業にとっても女性にとっても不幸なこと」と危惧する。

「私は様々な分野の企業人事に関わり、多くの女性社員とも接していますが、<バリバリ働きたい>とか<もっと仕事で活躍したい>と願う“バリキャリ女性”がすべて管理職になることを望んでいるわけではありません。

 仮に望んでいても、出産・育児といったライフイベントを抱える女性にとって、管理職の責任の重さや仕事のハードさにやり切れない現実もあるのです」(中川さん)

 企業側もこうした現実を把握しながら、「とにかく肩書きだけでも管理職につけておけば同業他社と(数値で)足並みが揃うし、国や世間から非難されることもない」(大手電機メーカー社員)と、建前ばかりの女性活用がすでに横行しているのだ。中川さんが続ける。

「極論すれば、女性は<バリキャリを目指さないなら、コモディティ(一般職)で我慢して>といった二極化した選択肢しか与えられず、どちらかを選ばざるを得ないのが今の状況なんです。それも国が高い管理職数値目標にこだわるがゆえの弊害だと考えます」

関連キーワード

関連記事

トピックス

グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
《ムッチ先輩から1年》磯村勇斗が32歳の今「民放ドラマ初主演」の理由 “特撮ヒーロー出身のイケメン俳優”から脱却も
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン