お年寄りが浴槽で水死した、という話をよく耳にすると思いますが、あれも急な温度変化で急速に血圧が下がって、脳に血がまわらなくなることによって引き起こされるものです。つまり、恐ろしいのは血圧が高いことではなく、「急に下がる」ということなのです。
そして、実はこのようなリスクをひきおこすのが「降圧剤」なのです。
降圧剤で少し前までよく使われていた「Ca拮抗剤」の無作為化試験では、20以上血圧を下げたグループは、少しだけ下げたグループと比較して、死亡率が1.4倍あがったという結果が出ました。私たちの研究でも、180/110以上という血圧高めの方たちのうち、降圧剤を飲まなかった人たちと、降圧剤で160/100未満まで血圧を下げた人たちを比較したところ、薬を飲んだグループの死亡リスクが10倍に跳ね上がったという結果が出ています。
このような降圧剤のリスクは世界では「常識」とされていますが、日本だけはすさまじい勢いで服用されており、厚労省の平成24年「国民健康・栄養調査報告」では70歳を超える人では54%が服用しています。「129以下」という異様なほど厳しい基準によって、健康な人が本来飲む必要のない「危ない薬」を飲ませられているのです。
※SAPIO2014年9月号