ひたすら拡大路線を突き進む流通業という点では、イオンもダイエーと似た歩みを遂げてきたように思えるが、どこで明暗が分かれてしまったのか。
「ダイエーはイオンやセブン&アイグループと違って、不動産取得に執着するあまり、ホテル、遊園地、プロ野球球団まで傘下に収め、小売りやその周辺事業にとどまらない多角化を進めてきました。中内氏の旺盛な事業欲といってしまえばそれまでですが、結局、不慣れな業界に参入して失敗を重ねたことも破綻の要因になったのです」(鈴木氏)
中内氏の長男でダイエーの元副社長だった潤氏は、かつて朝日新聞のインタビューで過去の買収案件について、こんな告白をしている。
<ボス(中内功氏)が引き受けた会社は、ミシンの「リッカー」、栃木にあった「小山ゆうえんち」など、いくつもあります。ボスは、頼まれたら断れない人でした。
(中略)でも、お断りしたこともあるんです。85年に倒産した三光汽船です。自民党の実力者だった河本敏夫さんの会社です。管財人に、という話に、役員みんなが反対しました。「船を買って、何をするんですか!」>(朝日新聞2012年10月1日記事)
中内ダイエーはバブル景気に翻弄された典型的な企業だったが、流通革命の先駆者であったことも事実。
「日本の小売業のビジネスモデルはすべて中内さんが手本を示し、ダイエーの一時代が終わった後も他社が開花させている」(前出・鈴木氏)
店の看板は消えてもイオングループの中で今後ダイエーがどう生かされるのか。それは日本の小売業全体の将来を占う意味で新たな指針となるかもしれない。