日本の自動車メーカーがORVRのノウハウを持っていないわけではない。実際、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ各社は、「国内で販売する自動車にはORVRを搭載していないが、米国で販売する自動車には搭載している」と口を揃えた。
EPAの資料によればORVRを実施する費用は自動車1台につき6~8ドルとなっているが、日本の場合は「1万~2万円程度のコストはかかるのではないか」(自動車業界関係者)とされている。
なぜ日本の自動車メーカーはORVRのノウハウを持ちながら国内では実施しないのか。自動車メーカーの業界団体である一般社団法人「日本自動車工業会」の担当者が次のように説明する。
「私どもはコストや効果を含め、どの対策が一番有効なのかを冷静に議論した上で、行政側の判断を求めたいという立場です。結論が出る前にORVRにすれば、お客様にお願いすることになるコスト負担が無駄になりかねません。
さらにいえば、日本製トラックなどの場合、燃料タンクが荷台の下にあり、大改造が必要になる可能性があります。一方、スタンド側への切り替えは即効性があり、すべての車に有効になる。欧州ではそうしたコスト面を考慮し、スタンド側の対策を採用したと聞いています」
コストの問題は小さくないのかもしれないが、できれば対策を他業界に押しつけたいという思惑も透けて見える。
※週刊ポスト2014年11月7日号