国際情報

香港デモ 中国はマフィアを背後で操り香港で情報工作展開中

 香港の民主デモが長期化するなか、中国当局はすでに警察、車、情報機関から数百人の工作員などを香港に送り込んでいる。しかしそれでも香港警察が占拠学生らをすべて強制排除できない場合どうなるのか。ジャーナリストの相馬勝氏が解説する。

 * * *
 人民日報系列の国際関係紙「環球時報」(電子版)は9月29日、「香港警察が力不足なら武警(武装警察)が混乱平定の支援可能だ」との王強・武警政治学院(大学)助教授の論文を掲載した。論文の主旨は次のようなものだ。

「香港が国家の統一や安全に危機を与えるような制御不能な緊急事態に陥った場合、香港の『1国家2制度』は北京の中央政府が付与した権利であるから、中国の法規を香港特別行政区に適用できる。武警も中央政府の命令に従って『武装警察法』を香港にも適用させ、騒乱を平定、社会秩序を回復させることは合理的かつ合法的だ」

 しかし、王助教授の論文は掲載されてから数時間でネット上から削除されており、中国指導部内で、香港への武警投入などの武力行使について、慎重かつ否定的な意見が少なくないことを示している。とはいえ、天安門事件同様、香港で混乱が拡大し、警察による鎮圧の見通しが立たない場合、最終的には武装警察を導入しての鎮圧も辞さないことは想像に難くない。

 共産党筋によると、習近平は9月30日、国慶節(建国記念日)のレセプションで行った演説の中で、香港について、「中央政府は1国2制度と基本法を断固守り抜く」と述べたが、香港の自治を示すもう一つの肝心な言葉には言及しなかった。

 それは「香港人が香港を治める」という意味の「港人治港」という言葉だ。歴代の最高指導者は「1国2制度」と「港人治港」をペアで用いていたが、習近平政権移行後、他の指導者も港人治港には言及しておらず、極めて異例。「習近平が港人治港を意図的に無視しているとしか考えられない。つまり、習近平は『北京が香港を統治する』と考えているのだ」と同筋は指摘する。

 したがって、香港が収拾不能の状態に陥れば、習近平は「動乱」を理由に、武警を導入する可能性は否定できない。すでに、中国当局は香港マフィアを背後で操り、多数の工作員を香港に入り込ませて、情報工作を行っている。さらに、中国内では今回の香港の騒ぎと同じようなデモや暴力的事件などは日常茶飯事であり、中国指導部が本気になれば、鎮圧することなど朝飯前だろう。

 習近平は慎重にその時期を見極め、いざというときには、香港警察のなかに武警を紛れ込ませ、一気にデモ隊を強制排除するというシナリオが着々と進んでいるのだ。

※SAPIO2014年12月号

関連キーワード

トピックス

双子の男の子の母となった中川翔子。出産前日のインスタグラム@shoko55mmts より。
【祝・速報!】中川翔子が双子の男の子を出産、多くの苦難を乗り越えてミラクル誕生
NEWSポストセブン
「ゼロ日」で59歳の男性と再婚したという坂口
《お相手は59歳会社員》坂口杏里、再婚は「ゼロ日」で…「ガルバの客として来てくれた」「専業主婦になりました」本人が語った「子供が欲しい」の真意
NEWSポストセブン
愛されキャラクターだった橋本被告
《初公判にロン毛で出廷》元プロ棋士“ハッシー”がクワで元妻と義父に襲いかかった理由、弁護側は「心神喪失」可能性を主張
NEWSポストセブン
水谷豊
《初孫誕生の水谷豊》趣里を支え続ける背景に“前妻との過去”「やってしまったことをつべこべ言うなど…」妻・伊藤蘭との愛貫き約40年
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年9月28日、撮影/JMPA)
「琵琶湖ブルーのお召し物が素敵」天皇皇后両陛下のリンクコーデに集まる称賛の声 雅子さまはアイテム選びで華やかさを調節するテク
NEWSポストセブン
世界選手権でもロゴは削除中だった
《パワハラ・セクハラ問題》ポーラが新体操日本代表オフィシャルスポンサーの契約を解除、協会新体操部門前トップが悔恨「真摯に受け止めるべきだと感じた」
週刊ポスト
辞職勧告決議が可決された瀬野憲一・市長(写真/共同通信社)
守口市・瀬野憲一市長の“パワハラ人事問題”を市職員が実名告発 補助金疑惑を追及した市役所幹部が突然の異動で「明らかな報復人事」と危機感あらわ
週刊ポスト
新井被告は名誉毀損について無罪を主張。一方、虚偽告訴については公訴事実を全て認めた
《草津町・元町議の女性に有罪判決》「肉体関係を持った」と言われて…草津町長が独占インタビューに語っていた“虚偽の性被害告発”
NEWSポストセブン
田久保真紀市長が目論む「逆転戦略」は通用するのか(時事通信フォト)
《続く大混乱》不信任決議で市議会を解散した伊東市の田久保真紀市長 支援者が明かす逆転戦略「告発した市議などを虚偽告発等罪で逆に訴える」
週刊ポスト
祭りに参加した真矢と妻の石黒彩
《夫にピッタリ寄り添う元モー娘。の石黒彩》“スマホの顔認証も難しい”脳腫瘍の「LUNA SEA」真矢と「祭り」で見せた夫婦愛、実兄が激白「彩ちゃんからは家族写真が…」
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
《目撃者が明かす一部始終》「後ろめたいことがある人の行動に見えた」前橋・女性市長の“ラブホ通い詰め”目撃談、市議会は「辞職勧告」「続投へのエール」で分断も
NEWSポストセブン
本誌記者の直撃に答える田中甲・市長
【ダミー出馬疑惑】田中甲・市川市長、選挙でライバル女性候補潰しのために“ダミー”の対立女性候補を“レンタル”で擁立した疑惑浮上 当の女性は「頼まれて出馬したのか」に「イエス」と回答
週刊ポスト