ビジネス

派遣法改正 「受け入れ制限撤廃」で貧富の差はますます拡大

労働者派遣法改正は本当に「ハケン社員」のためか

“ハケンの品格”はどこまで保たれるのか――。

 柔軟な働き方を促す狙いで安倍政権が目指している「労働者派遣法」の改正案が、野党の猛反発を受けながら11月12日にも衆議院で強行採決が図られる見通しだ。

 改正案の大きなポイントは、派遣労働者の受け入れ期間の制限が事実上、撤廃されることにある。

 これまで企業はソフトウェア開発、秘書、通訳など「専門26業種」以外は、同じ職場で派遣社員を受け入れる期間は原則1年、最長で上限3年と決められていた。それが改正されると、業種の括りを廃止したうえで、3年経っても“人を入れ替えれば”永久に派遣社員に仕事を任せることができるようになる。

 企業にとってみれば、派遣社員を交代するだけで安い労働力を継続し、業務を継続できるメリットは大きい。もし、仕事のできるベテラン派遣社員に4年目以降も同じ業務をしてもらいたかったら、派遣社員が派遣元の会社と無期雇用契約を結べば、それも可能になる。

 だが、この改正によって派遣社員の待遇が良くなり、安定した仕事が回ってくる保証はどこにもない。社会保険労務士の稲毛由佳氏が話す。

「3年ごとに仕事を失うリスクは職種の枠が外れることでむしろ高くなっていきますし、仮に同じ職場で引き続き働けたとしても、今回の改正法で推進されているようなキャリアアップや昇給は望めません。

 また、働いていた部署自体がなくなってしまうようなことがあれば、派遣元と派遣先間の契約解除で新たな派遣先を探さなくてはならず、給料や勤務地の条件が悪くなることも十分に考えられます」

 そもそも派遣社員の待遇改善なしに規制緩和に突き進むのは危険だ。

 厚労省の調べでは、派遣労働者の平均時給は40代後半で1200円と安く、正社員の4割ほど。年収も300万円未満の人が多い。いくら正社員と同じ仕事内容で長く働けたとしても、これでは満足な生活が送れない。前出の稲毛氏もいう。

「20代、30代の独身世帯ならまだしも、40代以上で一家の大黒柱ともなると生活するのもギリギリ。たとえ派遣社員同士の夫婦が共働きしても年収600万円がせいぜい。これで子供2人の学費を払って大学までいかせ、住宅ローンを払ってということになると厳しいでしょう」

関連記事

トピックス

「新証言」から浮かび上がったのは、山下容疑者の”壮絶な殺意”だった
【壮絶な目撃証言】「ナイフでトドメを…」「血だらけの女の子の隣でタバコを吸った」山下市郎容疑者が見せた”執拗な殺意“《浜松市・ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
【体にホチキスを刺し、金のありかを吐かせる…】ルフィ事件・小島智信被告の裁判で明かされた「カネを持ち逃げした構成員」への恐怖の拷問
NEWSポストセブン
グラドルデビューした渡部ほのさん
【瀬戸環奈と同じサイズ】新人グラドル・渡部ほのが明かすデビュー秘話「承認欲求が強すぎて皆に見られたい」「超英才教育を受けるも音大3か月で中退」
NEWSポストセブン
2人は互いの楽曲や演技に刺激をもらっている
羽生結弦、Mrs. GREEN APPLE大森元貴との深い共鳴 絶対王者に刺さった“孤独に寄り添う歌詞” 互いに楽曲や演技で刺激を受け合う関係に
女性セブン
無名の新人候補ながら、東京選挙区で当選を果たしたさや氏(写真撮影:小川裕夫)
参政党、躍進の原動力は「日本人ファースト」だけじゃなかった 都知事選の石丸旋風と”無名”から当選果たしたさや氏の共通点
NEWSポストセブン
セ界を独走する藤川阪神だが…
《セの貯金は独占状態》藤川阪神「セ独走」でも“日本一”はまだ楽観できない 江本孟紀氏、藤田平氏、広澤克実氏の大物OBが指摘する不安要素
週刊ポスト
「情報商材ビジネス」のNGフレーズとは…(elutas/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」は“訴えれば勝てる可能性が高い”と思った》 「情報商材ビジネス」のNGフレーズは「絶対成功する」「3日で誰でもできる」
NEWSポストセブン
入団テストを経て巨人と支配下選手契約を結んだ乙坂智
元DeNA・乙坂智“マルチお持ち帰り”報道から4年…巨人入りまでの厳しい“武者修行”、「収入は命に直結する」と目の前の1試合を命がけで戦ったベネズエラ時代
週刊ポスト
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン