私の経験をお話しすれば、1975年の本田技研の総会がわかりやすいでしょう。長時間にわたって演説をぶって社長を攻撃していると、本田技研の人間が“小池さんに電話がかかっています”という。
演説を中断して電話に出ると、本田技研のメーンバンクである三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)から“なんとか発言を止めてもらえませんか。(小池氏の師匠格である)上森子鉄氏(※注2)に相談すればいいのでしょうか”という電話でした。結局最後は銀行が尻ぬぐい役として出てくるんです」(小池氏)
メーンバンクと企業の構図は今も変わらない。スキャンダルを突き、カネを得ようとする反社会的勢力は結局のところ、“トラブル処理役”としての「銀行」に群がることになる。
【※注1】総会屋利益供与事件/1997年に発覚した銀行・証券各社による総会屋・小池隆一氏への不正利益供与事件。第一勧銀はバブル期を挟む10数年で460億円を小池氏側に融資し、うち100億円あまりが不正と認定された。この事件がきっかけで銀行・証券界と監督官庁の腐敗が明らかになり、日銀・旧大蔵省接待汚職、大蔵省解体に発展した。
【※注2】上森子鉄(かみもり・してつ)/1901年生まれの政財界のフィクサー。菊池寛の書生を経て、戦前は旧文藝春秋社の監査役などを務める。外務大臣の藤山愛一郎や経団連常任理事の今里広記らと親しく付き合う一方、小池氏を総会屋として育てた。
※週刊ポスト2014年11月21日号