われわれの祖先はどのように日本に渡り、どのように変貌したのか。最先端のDNA分析により得られた新事実を、ヒトゲノムによって日本人の起源を探る研究の第一人者、国立遺伝学研究所の斎藤成也教授が明かす。
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DNA分析という手法の開発により、分子生物学によって日本人のルーツを探る研究は劇的に進歩した。DNAは「たんぱく質の設計図」とされる物質で、親から子に遺伝情報を継承する。DNAの変異が身体機能の差異に現れることがある。そこから自分のルーツとなる集団を類推することもできる。
たとえば、日本人の瞳の色は茶色がスタンダードでこれは東アジアで共通だが、現代人のDNA分析から推定すると、縄文人は青い瞳だったかもしれない。
耳垢には、かさかさ型(乾型)としっとり型(湿型)の2種類あるが、これもDNAの特定箇所が関わっている。日本人を含む東アジアの集団では乾型が多いが、欧州ではほとんどが湿型だ。アイヌ人と沖縄人も湿型の頻度が高い。世間では「乾型が弥生系で、湿型が縄文系」などといわれているが、当たらずとも遠からずと言えるだろう。ちなみに、耳垢遺伝子の近傍に腋臭遺伝子があるようで、耳垢が湿型の場合、腋臭が強いという相関もある。
お酒に対する耐性は、アルコールから生じるアルデヒドの分解酵素を作るDNAに関わり、お酒に弱い人はこの部分が変異している。欧州と比べると、中国南部や朝鮮半島、日本にはこの変異したDNAを持つ人が多い。弥生人は酒に弱かったのかもしれない。
昔から日本人は牛乳に弱いと言われているが、牛乳を飲んでもお腹がゴロゴロとしない人は、授乳期を過ぎても乳糖分解酵素を作り続けられるからで、これは変異したDNAをもっているからだ。古くから牧畜文化があった欧州やアフリカでは、集団によって70~80%に達する。一方、牧畜文化を持たなかった日本人は15%ほどだ。牛乳を飲んでもお腹が下らない人は、欧州やアフリカからDNAを引き継いでいる可能性もある。
※SAPIO2014年12月号
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