投資情報会社・フィスコ(担当・小瀬正毅氏)が、12月1日~12月5日のドル・円相場の見通しを解説する。
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今週のドル・円は、米国11月の雇用統計や衆議院選挙の世論調査に注目する展開となる。解散総選挙と円安というアノマリー、年末に向けた米国企業の利益送金によるドル買いなどで、ドルは下げ渋る展開が予想されるものの、本邦通貨当局が円安のスピードに対して懸念を表明していることで、ドルの上値は限定的か。
リスク要因は、イスラム国を空爆している有志連合国でのテロの可能性、エボラ出血熱の感染拡大懸念、地政学的リスク(ウクライナ情勢、中東情勢)の緊迫化などが想定される。しかしながら、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による外貨建て資産への投資増額(23%⇒40%)からドルの下値は限定的だと予想される。
【地区連銀経済報告】(3日)
米国の10月のインフレ率が前年比+1.6%へやや上昇したことで、米国の11月雇用統計が改善していた場合、16-17日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げまでの「相当の期間」という時間軸が削除される可能性が高まることになる。FOMCで、米国の景況感の判断材料となる地区連銀経済報告にも要注目か。
【米国の11月雇用統計】(5日)
米国の11月雇用統計の予想は、失業率が5.8%で10月の5.8%と変わらず、非農業部門雇用者数は前月比+22.5万人で、10月の+21.4万人からの増加幅の拡大が見込まれている。予想通りに雇用情勢が改善した場合、12月16-17日のFOMCで利上げまでの「かなりの期間」という時間軸が削除される可能性が高まることで、ドル買い要因となる。
予想に反して雇用情勢が悪化した場合は、低金利政策の長期化観測から、ドルは上げ渋る展開となる。
【衆議院選挙の世論調査(475議席)】
14日の衆議院選挙の投開票に向けて、世論調査に注目する展開となる。与党が絶対安定多数の266議席以上を確保した場合、アベノミクスが信認されたことで、安倍トレード(日本株買い・円売り)が継続することが予想される。
265議席を割込んでも、過半数の238議席を確保した場合は、安倍トレードが継続することが予想される。過半数を割込んだ場合、安倍晋三首相は退陣となり、安倍トレードが失速することになる。
【スムージングオペとしての円買い介入の可能性】
麻生太郎財務相は、「円の下がり方のスピードのテンポ速すぎる」と円安のスピードへの警戒感を示した。黒田東彦日銀総裁も「円安の影響は、輸出の増加などプラスの面がある一方で、家計の実質所得の押し下げなどマイナス面もある。為替相場は、ファンダメンタルズを反映して、安定的に推移することが望ましい」と述べ、急速な円安に対する警戒感を示している。
外為特会の持ち値は約111円60銭付近であることで、膨大な外貨準備を減らし、円安スピードを牽制できる円買い介入の可能性に要警戒か。
12月1日-5日に発表予定の主要経済指標のポイントは次の通り。