相続税は来年1月1日から最高税率が55%に引き上げられるとともに、基礎控除額がこれまでの5000万円+(1000万円×法定相続人の数)から3000万円+(600万円×法定相続人の数)に引き下げられ、より多くの人が相続税の課税対象となる。
この過酷な税制を見ると、そこそこの収入や資産を得たら、それ以上に収入や資産を増やそうというインセンティブはなくなってしまう。かくして日本ではますます富の再分配が進み、「みんなが貧乏になる仕掛け」が出来上がっていく。
これはピケティ教授が主張する富の再分配の一つの形である。だが、富を持てる者と持たざる者の不平等を解決するために日本のような累進課税を導入し、税金を取りやすい金持ちなどから取るというのは悲しい話だと思う。
なぜなら、日本の場合は医者や農民などが税制面で極めて優遇されているし、所得税の課税最低限が単身者だと114万4000円、夫婦のみだと156万6000円、夫婦と子供2人(大学生と中学生)だと261万6000円で、税金を払っていない人々が大勢いるなど、租税負担が平等ではないからだ。
私は職業によって税制面で優遇されたり、所得が少ないからといって所得税を免除されるというのはおかしいと思う。みんなで負担し、みんなでメリットを享受するという民主主義の原則から外れるからだ。活気のある社会を維持するためには、所得に応じて負担することで国家や自治体の公共サービスが受けられるという制度にすべきだろう。
※週刊ポスト2014年12月12日号