国内

嗜好品と病気を結びつける疫学調査 「因果関係なし」の声も

 酒やたばこ、コーヒーなどの嗜好品は、過剰摂取による健康被害が疑われやすい。

 例えば、日本人の多くが愛飲するコーヒーも、かつてはコーヒーに含まれるカフェインに発がん性があると言われた時期があったが、最近では糖尿病の予防効果やアルツハイマー病の認知症状を改善するといった研究データが出るなど、良くも悪くも諸説が飛び交う。

 一方的に“悪者”にされやすいのが、酒とたばこだ。「酒飲みは胃潰瘍になりやすい」との説も一人歩きしているが、決して断定することはできない。医学博士の葦原祐樹氏がいう。

「現在では胃潰瘍の原因はピロリ菌だと分かり、ピロリ菌の保菌者がストレスを受けると胃潰瘍を発症します。確かにストレスの多い人は酒を飲むので、胃潰瘍になりやすいという2つの因子に関連はあります。しかし、だからといって飲酒が胃潰瘍の原因ではなく、むしろ治療法、あるいはストレス軽減の予防法とも言えるのです」

 つまり、「○○すると××になる」との<相関関係>はあっても、原因と結果が直接結びつく<因果関係>にはならない。なぜ個々の要因による疾病への影響度を断定できないのかといえば、疫学調査という統計データに頼っているからである。

「たばこを吸うと肺がんになる」と発表されている多くの研究データも、まさに疫学調査の結果であるが、現実には男性喫煙者が1950年の85%から2010年に36.6%にまで下がっているにもかかわらず、肺がんの死亡者数は1119人から約7万人とおよそ60倍に膨れ上がっている。

 この数値ひとつを見ても、たばこと肺がんの因果関係を示すのは容易ではなく、また医学的に証明されたものではない。

 では、実際にどうやって調べているのか。『信じてはいけない「統計的に正しい」こと』(幻冬舎ルネッサンス)の著者である市毛嘉彦氏に聞いてみた。ちなみに、同氏は自動車メーカーで数々の開発実験を行ってきた技術者だ。

「基本的には、喫煙者の集団と非喫煙者の集団を長期間観察し、それぞれの集団で肺がんになる人の割合を調べます。このとき、喫煙以外の条件が肺がんの発症に影響するのを防ぐため、年齢や性別などの条件を揃えることが必要になります。

 しかし、実際には初めから条件が揃った集団を作ることは難しいので、条件が異なる大量のサンプルを観察し、結果を統計処理する段階で、条件が同じサンプルを取り出すことになります」

関連記事

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン