こうして様々な疫学調査の結果から、たばこと肺がんに相関関係があることが導き出されるのだが、「因果関係があると主張するのは早計だ」と市毛氏は続ける。

「例えば、肺がんになりやすい体質の人がたばこを好む体質であるという可能性を完全に否定できないという側面もあるからです。このような体質、生理学的特性のことを“交絡因子”といいますが、もし、たばこが肺がんの原因であると断定するなら、このような交絡因子は絶対にないという根拠を示す必要があります」

 交絡因子とは、原因と考えている要因以外で、結果に影響を与える恐れのある因子のこと。たばこと肺がんの関連性を調べるのであれば、たばこ以外の因子が肺がんの発生率に影響を与えている可能性も調べなくてはいけないということだ。

 前出の葦原氏も、「喫煙と肺がんの関連ばかりに注目しても、もっと重要な“第三の因子”が見過ごされていれば無意味です」と言う。

 もちろん疫学調査のすべてが信用できないわけではないが、いつまでも因果関係が立証できない要因だけをターゲットにしていたら、後に取り返しのつかないことになるのではないか。

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