最後の見舞いに行った孝太郎氏に、政孝はこう言い遺したという。
「お前は国際結婚だけはするなよ」
それは愛する妻に苦労ばかりかけてしまったことへの懺悔と葛藤から出た言葉だったのか。
「僕と祖父2人きりの時でした。『余計な苦労をかけてしまった』『(国際結婚しなければ)リタはもっと長生きできたと思う』と。祖母は自分の母親の葬儀やお墓参りにも行けなかった。祖父にはそうしたことへの無念があったのでしょう」
ドラマ『マッサン』では、いよいよウイスキーの蒸留所造りに取りかかる。数多の笑いと涙のエピソードに彩られた政孝・リタ夫妻の人生が、この先どう描かれるのか楽しみである。
【プロフィール】
◆竹鶴孝太郎(たけつる・こうたろう)1953年北海道余市生まれ。15歳まで余市町に住み、幼少期から少年期までを政孝およびリタと同じ屋根の下で過ごす。青山学院大学を卒業後、ニッカウヰスキーに入社。約20年間勤務した後退社し、ブランドコンサルタントとして活躍。現在、ビジュアル制作大手・アマナの事業開発室室長を務める。著書に『ウイスキーとダンディズム 祖父・竹鶴政孝の美意識と暮らし方』(角川oneテーマ21)、『父・マッサンの遺言』(監修、KADOKAWA/角川マガジンズ)。
※週刊ポスト2014年12月19日号