クルマの未来を拓くトヨタの燃料電池車「MIRAI」
●3位/ミライ(トヨタ自動車)
世界初の本格量産燃料電池車としてトヨタがリリースした「ミライ」。このモデルは日本のエネルギー戦略のひとつ「水素エネルギープラットホーム」の実現に一歩を踏み出す記念碑的なクルマで、その登場は社会的にはきわめて意義深い。クルマが魅力的に仕上がっていれば1位でもいいくらいのモデルである。
3位にした理由のひとつは、クルマをどういうエネルギーで走らせるかということ以前の、クルマそのものの魅力がいまひとつだったこと。
デザインに新味がなく「次期プリウスです」と言われても信じてしまうようなテイスト。室内はとても丁寧に作られているが、ユーザーに最新のクルマに乗っているのだという喜びを感じさせるような情感に欠ける。
性能面では乗り心地はトヨタのフラッグシップモデル「レクサスLS」や「センチュリー」をも上回るのではないかと思われる滑らかさが特筆に価する一方、ハンドリングや加速は刺激性の薄いのっぺりしたもので、クルマを走らせる楽しさに欠ける。
もうひとつ3位にした理由は、これはミライに限った話ではないが、燃料電池車は効率の面で、まだ究極のエコカーと呼ぶにはほど遠いということだ。ミライは5kgの水素を搭載し、JC08モード走行時で650km走れるという。
高位発熱量で比較すると水素1kgはおおむねガソリン3kg、すなわち4リットル分に相当するので、ガソリン車に換算すれば32.5km/L。これは中型セダンの燃費トップランナー、ホンダ「アコードハイブリッド」の30km/Lを少し上回る数値でしかない。加えて、圧縮水素方式の場合、高圧タンクに水素を充填するのに多大なエネルギーを消費するので、そのぶんも割り引く必要がある。
水素搭載方式や燃料電池単体のエネルギー効率アップなど、課題の多い燃料電池車だが、水素はエネルギー利用の多様化という点で有用であることはまぎれもない事実。
世界最大の自動車メーカーが先陣を切って燃料電池車を出したことで、世の中の技術開発熱を高める効果もあろう。その意味ではミライは、まさしく未来を拓くためのクルマ、偉大な3位と言える。