ビジネス

築地銀だこ社長「28歳の頃アイスまんじゅうで1億円の借金」

 世界に店舗進出、9月には東証マザーズに上場を果たすなど快進撃が続く「築地銀だこ」を展開するホットランドは、いまや年商200億円をあげている。焼そばに始まった同社がたこ焼き1本に絞るに至るまでの道のりについて、佐瀬守男社長(52)にノンフィクションライターの高川武将氏が聞いた。(文中敬称略)

 * * *
「実家が祖父の代から続く鉄工所でした。3時の休み時間になると、いつも婆ちゃんや母ちゃんが焼きそばを焼いて、住み込みの職人たちと皆で食べるんです。それが本当に旨かった。皆でキャッチボールしてくれたりして、僕も凄く楽しい時間で、3時になるのが待ち遠しかった……」

 かつて繊維の町として栄えた桐生は、機織の機械工場が軒を連ねていた。町全体が助け合いの精神で成り立ち、ランニングシャツ一枚で真っ黒になって働く職人たちは、生き生きと輝いていた。高度成長期の希望に満ち溢れた日本の光景が、佐瀬の原点となっている。だから焼きそば店を始めたとき、「ほっとする安らぎの空間と笑顔一杯の団欒を」という願いを込めて「ホットランド」と命名したのだ。

 焼きそばに始まり、焼き鳥、お好み焼きなどあらゆる和のファストフードを売りながら、銀だこに至るまでの10年は、少しの成功と多くの苦難の連続だった。

「もう、失敗ばっかりでした」

 佐瀬はそう笑うと、数々の失敗談を話してくれた。以下はほんの一例。

「28歳の頃、横浜の中華街でアイスまんじゅうが爆発的に売れて、実家に兄貴と組んで1億かけて工場を作ったんです。そしたら途端に売れなくなって。守男と組むと身上を潰されると親に勘当された(笑)。銀座で自転車に積んだアイスキャンデーを売ったり、高速のサービスエリアでジャガイモふかして売ったり、ありとあらゆるものを売って借金は返しました。これは売れると思うと、つい工場を作ってしまうんですよ」

 昼食時以外にもコンスタントに売れるたこ焼き一本に絞ったのは1994年のこと。大阪に住みこんで食べ歩き、タコ、粉、天カス、青海苔の専門家から教えを請い、3年の研究の末「外はパリッ、中はトロッ、タコがプリッ」という独特の食感を完成させる。

「銀だこが出来たとき、これは行けると確信しました。その頃、実家の鉄工所が潰れかけていて、3億も借金があることがわかった。僕は勘当されていたけど、親兄弟を守ろうと社長になって、鉄工所をたこ焼きの機械の製造工場にしました。機械を売るには、どんどん出店していくしかない。気づくと1年半で借金がなくなっていた。アレは本当に奇跡でした」

※SAPIO2015年1月号

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン