賑わいを見せる大人のお菓子。実際に食べている“大人”とは、どんな人たちなのだろう。菓子文化研究家(アメリカ菓子&和菓子)の原亜樹子さんに聞いた。
「子ども時代にそのお菓子を食べて育った人など、30代半ばから団塊の世代あたりがメイン・ターゲット層になっていると思われます。同時に“大人”というキーワードに敏感な10代後半~20代も、つい手が伸びる商品ですよね」
つまり“大人”とは、幅広い世代を包含する言葉なのだ。さらに原さんはこう語る。
「大人という言葉には年齢のみならず、“上質なものを知る人のための”とか、“上質な素材を使った”などのイメージを持たせているようです。実際に、定番商品よりもワンランク上の素材、または甘さを控えた素材、あるいは子どものお菓子にはあまり使われない素材(コーヒー、抹茶、カカオ風味を強調したチョコレートなど)を使っている商品が多く見られます。これらによって、ちょっと高価格でも、消費者は納得ができるんですね」
文字通りの大人から、背伸び消費をしたい層、高級・上質イメージに惹かれる人までを取り込もうとしている大人のお菓子。最後に、流行の背景について聞いた。
「少子化の時代、子どもだけをターゲットにするのは限界があります。ですからメーカー側はターゲットを広げたい。そのために、定番菓子の高い知名度を生かしつつ、上手く新しさを加えることで、お菓子は子どものものというイメージを払しょくしました。
消費者の側にとっては、今の時代、大きな贅沢は難しい。ですが、従来のお菓子+α程度の価格であれば、比較的手軽に購入できますよね。日常の延長上にあるちょっとした贅沢、ささやかな楽しみとして、大人のお菓子を手に取っていると思われます。懐かしい味の“今の自分”向けの新バージョンは、とりあえず一度は食べてみようという気にさせられるのではないでしょうか」
お菓子が美味しいのは、味覚の変化はあるとはいえ、基本的に子どもも大人も共通なのだろう。だが、そこに大人らしさを加えたくなるのが、大人なのかもしれない。