国内

安田浩一氏 ヘイトスピーチする理由で納得回答得たことなし

 活動初期から「在日特権を許さない市民の会」(在特会)を追い続け、言動の危うさを伝えているのがジャーナリスト・安田浩一氏だ。ヘイトスピーチ批判の高まりとともに一般に認知されるようになった自称・保守系市民団体の特徴について、安田氏が解説する。

 * * *
 プロレスのマイクパフォーマンスを連想した人も多かったはずだ。

「オマエみたいなのはな、許せねえって言ってんだよ!差別主義者!」「だったらやってみろよ!」

 昨年10月20日におこなわれた橋下徹大阪市長と桜井誠在特会会長(当時)の「公開討論」。フタを開けてみれば罵倒の応酬に終始した。

 この会談によって在特会は俄かに世間の注目を集めることとなった。これまで取材を重ねてきた私もまた、同会について尋ねられる機会が増えたが、内実が「差別主義者」の集まりであることに関しては、橋下市長に同意している。

 在特会は「在日コリアンなど外国人が日本で優越的、あるいは不当な権利を得て日本社会を脅かしている」と主張することで勢力を広げてきた自称・保守系市民団体だ。

 ネットの掲示板などで“同志”を募り、日韓断交、外国籍住民への生活保護支給反対、不法入国者追放などの排外主義的なメッセージを掲げ、全国各地で連日デモや街宣活動を展開している。いわゆる「ネット右翼」という“業界”にあっては、シンボリックな存在だ。

 日章旗や旭日旗、ときにはハーケンクロイツの旗まで掲げ「朝鮮人を日本から叩き出せ!」「殺せ!」と聞くに堪えないヘイトスピーチを叫びながら週末の繁華街を練り歩く集団と遭遇した経験を持つ人も少なくないだろう。こうした差別デモの多くが、在特会やその関係者によるものだと考えて間違いない。

 なぜそこまで醜悪な言葉を連呼しなければならないのか私はこれまでに何度もデモ参加者に問うてきたが、納得できる答えが返ってきたことはなかった。

「世間の注目を集めるため」
「ストレートな怒りをぶつけた方が説得力がある」

 デモ参加者の多くはそのように口をそろえるが、要するにネット掲示板などにみられる“言いっ放し”の言語感覚を、そのまま路上へ持ち込んだに過ぎない。

 彼ら彼女らにとって、デモや街宣はネットにおける“炎上”や“祭り”と同じである。他者の痛みを想像することなく平気で「殺戮」さえ示唆する在特会の「軽さ」は、しかしそれゆえに広い間口をもって多くの人間を引き込んできたこともまた事実だ。

※SAPIO2015年2月号

あわせて読みたい

関連キーワード

トピックス

佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
若隆景
序盤2敗の若隆景「大関獲り」のハードルはどこまで下がる? 協会に影響力残す琴風氏が「私は31勝で上がった」とコメントする理由 ロンドン公演を控え“唯一の希望”に
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン