一方の陳氏は令氏とは対照的で、真面目一方で愚直に秘書道に邁進、「胡氏の懐刀」ともいわれた切れ者だ。陳氏は胡錦濤氏が2013年3月に引退すると、胡錦濤事務所主任の職を解かれ、党中央弁公庁副主任という新たなポストに就いた。
この役職は党中央委員会の事務手続きのほか、重要会議の裏方、党総書記である習近平主席のスピーチライターなどの仕事を一手に引き受ける重要ポストだ。
この人事異動で、陳氏の上司に当たる党中央弁公庁主任は栗戦書氏で、習主席と極めて密接な関係を保ち、習近平グループの大番頭役を担っている。
ところで、栗氏は常に習主席と行動をともにしていることから、党中央委員会の通常業務は副主任の陳氏が差配することになる。
胡氏と習主席は昨年秋の党大会の指導部人事をめぐって、激しい権力闘争を展開したことで知られるが、「その胡氏の筆頭秘書を習近平政権の重職に登用したことは、習氏が陳氏の能力の高さを買っているからにほかならない」と北京の外交筋は指摘する。
その陳氏は1月初旬、大臣級の党中央文明弁公室副主任に就任しており、2人の秘書の明暗がくっきりと分かれている。これについて、中国問題に詳しく、『習近平の正体』(小学館刊)の著書もある相馬勝氏は「習近平グループが対立する共青団閥の分裂を狙って、胡錦濤氏の腹心中の腹心である陳氏を抜擢。出世したければ、陳氏のように、習グループに忠誠を誓えとのサインだとみてとれよう」と分析する。