国内

金なく縛り大きい弱小テレビ局でマツコ的スター生まれる理由

 テレビはネットなど新しいメディアに取って替わられる、もう面白いテレビ番組を作るのは不可能だ──などと悲観的な見方をされることも少なくない。しかし、本当にそうだろうか。コラムニストの亀和田武氏が、低予算でも環境が整っていなくても、テレビ番組は面白くなるという例を紹介する。

 * * *
 受信料という潤沢な資金のあるNHKだから、新たなチャレンジが可能なのだという見方は一面で正しい。それに加えてスポンサーのいないことで、民放よりはるかに自由度がある。

 では企業の規模の大小、身もフタもない言い方をするなら、金の有無だけが新しいコンテンツや才能を生み出すすべてかというと、案外そうでもないところが愉快だ。

 東京ローカルにTOKYO MXというテレビ局がある。「5時に夢中!」という帯番組からデビューしたのが、いまをときめくマツコ・デラックスだ。夕刊紙から下世話な記事をピックアップし、コメンテーターに感想を訊く。きわめて安上がりの作りだ。

 おまけに東京都の息がかかった局で、「都知事定例会見」も放送しなくてはならない。 石原慎太郎の都知事時代、彼の言動を紹介する記事の感想がマツコに求められた。「うーん」といって十秒近く黙るマツコ。司会者の顔を見て「この沈黙で、アタシの気持は判るでしょ?」。

 画面に緊張が走る。

「どうしても、何か言えというなら、言うわよ。でも、いいんですか?」

 慌てて笑いでゴマかし、次の話題に逃げる司会者。

 スリリングなやりとりで番組は話題を呼び、マツコは怖いもの知らずのスターになった。金はないし縛りは一杯ある小テレビ局でも、やりかた次第でスターは生まれる。

 くわえて“炎上”とは無縁な、程の良い緩さと、録画率を含めればまだまだ膨大な数を擁する視聴者。テレビは依然としてメディアの帝王だし、新しい娯楽をいましばらくは提供しつづけることが出来るだろう。

 しかしその間に何を作るかで、十年後の運命が決まる。

※SAPIO2015年2月号

関連記事

トピックス

二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
4月3日にデビュー40周年を迎えた荻野目洋子
【デビュー40周年】荻野目洋子 『ダンシング・ヒーロー』再ヒットのきっかけ“バブリーダンス”への感謝「幅広い世代の方と繋がることができた」
週刊ポスト
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
小野寺さんが1日目に行った施術は―
【スキンブースター】皮下に注射で製剤を注入する施術。顔全体と首に「ジュベルック」、ほうれい線に「リジュラン」、額・目尻・頰に「ボトックス」を注入。【高周波・レーザー治療】「レガートⅡ」「フラクショナルレーザー」というマシンによる治療でたるみやしわを改善
韓国2泊3日「プチ整形&エステ旅行」【完結編】 挑戦した54才女性は「少なくとも10才は若返ったと思います!」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン