ビジネス

ジャポニカ学習帳 トップシェア獲得までには紆余曲折あった

『ジャポニカ学習帳』はなぜ大ヒットしたのか

 誰もが知る児童向けノートの代名詞「ジャポニカ学習帳」。今でこそ学習帳の分野でトップシェアを誇るが、そこに至るまでには紆余曲折があった。ショウワノート開発部の小原崇氏と山端雪代氏がいう。
 
「もともとは富山県で創業した封筒や伝票を作るメーカーでしたが1956年に主力を学習帳の製造にシフトしました。翌年には東京へ進出したが最後発で知名度もなく、当時作っていた学習帳は苦戦続きだった」

 独自路線の打ち出しが必須と考えて行きついたのが、小学館の『ジャポニカ百科事典』とのコラボだった。
 
「当時の子供たちが憧れた百科事典と学習帳を組み合わせようというアイデアです。表紙には動植物のカラーの写真を採用する。百科事典を模してノートの表紙もざらついたエンボス紙を使い、ロゴには金箔押しをしました。付録にも百科事典の内容を盛り込み、価格も当時の学習帳の相場が30円だったところを、50円にしてプレミアム感を出したんです」(小原氏)

 かくして大阪万博開催の1970年、『ジャポニカ学習帳』が誕生。しかし50円の高額設定がネックとなり、発売後1年間はまったく売れなかった。しかし、起死回生の一手が流れを変えた。
 
「最後の手段としてテレビコマーシャルを打ったんです。それまでは学習帳のCMなんてなく、費用も高額で枠を確保するのも大変でしたが、昼メロの安い時間帯に偶然空きがあった。試しに流してみたところ、文具店やご家庭の奥様方の目に止まり、一気に知名度が上がりました。ワンランク上の学習帳として、指名買いをしていただけるまでに。当時は文具店のガラスショーケースの1段高い所に置かれ、憧れの学習帳だったようです」(小原氏)

 売り上げは右肩上がりに急伸したが、後追いの類似商品が続々登場。さらなる差別化を目指して、1978年から「世界特写シリーズ」を開始した。熱帯アジア編を皮切りに、海外で特撮したオリジナル写真を表紙に採用。37年来、撮影を担当するのは昆虫生態写真家の山口進氏。
 
「山口さんによれば、海外の原生林に1~2か月滞在しても目当ての花が咲かないこともありますし、撮影中に蚊にさされてデング熱にかかったりしたこともあるそうです。ですが、“表紙の花をもっと知りたい”だとか、“背景に写っている生き物の名前は何ですか”など子供たちからの思いもよらないうれしい反響があると苦労も吹き飛ぶとのこと。

 自然環境の変化や、『娘が虫を苦手でノートを触れない』といったご相談などで、1990年代から徐々にラインアップを変えた結果、2012年発売のシリーズからは花のみの表紙となっています」(山端氏)

 昨年は表紙をカスタマイズできる『ジャポニカ フレンド』も登場、今も進化を続けている。

撮影■木村圭司

※週刊ポスト2015年2月13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト