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夏目三久も号泣 瀬戸内海の小島にある不思議な「漂流郵便局」

漂流郵便局局長の中田勝久さんと局員(著者)の久保田沙耶さん

 瀬戸内海に浮かぶ小さな島、粟島にある不思議な郵便局、「漂流郵便局」をご存じだろうか? 故人、ペット、未来の自分…届け先のわからない手紙を受け付ける、たったひとつの郵便局。「過去・現在・未来」、「もの・こと・ひと」――何宛であっても、「漂流郵便局留め」で寄せられた手紙を「漂流私書箱」に収め、届け先不明の手紙を預かってくれる郵便局だ。

 もともとは、香川県三豊市粟島にある旧粟島郵便局を改装して、「瀬戸内国際芸術祭」に出展した1か月限定のアート作品だったが、芸術祭終了後も多くのはがきが寄せられたために現在も継続している。

 昨年10月、『あさチャン!』(TBS系)で取り上げられ、その「漂流郵便局」に寄せられた、亡き祖母への手紙を読み上げた夏目三久アナが、放送中に号泣したことでも話題になった。2月11日放送の『あさチャン!』(TBS系)では、“漂流する手紙たち”を書籍化した『漂流郵便局 届け先のわからない手紙、預かります』(小学館)が取り上げられ、再び話題を呼んでいる。そこに預けられた手紙とは、例えば以下のようなものだ。

 * * *
 お母ちゃん

 35年ほど前、お母ちゃんにもらった小使(小遣い)の中に古い100円札が入っていました。私も家計が苦しかったのですが、この100円札は使いませんでした。古くてまるで血のにじんだような、お金は私は、もったいなくて使うことが出来ずに今だにもっています。

 働いて、々々家族の為にがんばっ(て)くれたお母ちゃん、本当にありがとう。これは私のお守りとしてこれからも大切においておきます。

 ――あなたの娘より

 君の最後のことばは「おかあさん」。おとうさんではなかったのが少し残念。君はおかあさんが大好きで、とてもたよりにしていた。だからお年玉を貯めて、おかあさんにエメラルドの指輪をプレゼントしたよね。近頃、おかあさん君の指輪をしていない。聞いたら、太って指が入らなくなったって。でも時々指輪をそっと見ているそうです。やさしい浩太くん。ありがとうね。

 * * *
 同書では、上記のように亡き父母、11才で天国へいってしまった息子宛ての他、ボイジャー1号、長く使っためがね、まだ見ぬ恋人、愛するペット、未来の自分などに宛てて思い思いに綴った、心をゆさぶる69通の手紙を紹介している。

 漂流郵便局局長を務めるのは、粟島郵便局に45年勤務し、10代目局長を務めた中田勝久さん(80才)。

 漂流郵便局には、2015年2月12日現在で3720通もの手紙が寄せられている。これほどまでにたくさんの手紙が届くことについて、中田さんはこう語っている。

「だれもが胸のうちに秘めた想い、聞いてほしいという願望があると思うんです。そんな想いをはがきにしたためることで、気持ちの整理はもちろん、どこか癒されるのではないでしょうか」<本書より>

 当初は期間限定のアート作品として開局していたが、芸術祭が終わっても漂流郵便局宛てのはがきは増え続け、継続することになった。この「漂流郵便局」を作ったのは、アーティストの久保田沙耶さん(27才)。漂流郵便局局員でもある。

「漂流物が漂うように、郵便物や私自身、この島や星ですらも、どれも絶えず移動していて、固定されているものなどないのかもしれません」<本書より>

 久保田さんは本書で、漂流郵便局との関わりを通して感じたことをこんなふうに語っている。久保田さんが粟島に流れ着いた漂流物に手を加えて作ったアート作品も、同じ場所に展示されている。

 漂流郵便局を訪れた人は誰でも手紙を読むことができ、もし自分宛の手紙を見つけたら、持ち帰ることもできる。自分宛の手紙を探しに、もしくは、いつかのどこかの誰か宛の手紙を読みに、ふらっと漂流郵便局へ足を運んでみるのもいいかもしれない。中田局長が温かい笑顔で迎えてくれることだろう。

 いつかのどこかの誰か宛の手紙を出したい人は、下記の注意点をご了承の上、送付を。

※注意点
1.送っていただいた手紙のご返却はできません。
2.手紙の著作権は「漂流郵便局」(制作者・久保田沙耶)に譲渡していただきます。
3.先出人様のご住所は不要です。

 以上を了承いただける方は、はがきに切手を貼って下記住所まで郵送してください。

〒769-1108
香川県三豊市詫間町粟島1317-2
漂流郵便局留め
○○○○○様
(↑いつかのどこかの誰か様)

 なお、漂流郵便局に直接投函することもできる。営業時間内は窓口まで、それ以外は入り口左側の「郵便受け」へ投函を。詳しい開局日、時間に関しては、ホームページを参照。

※「漂流郵便局」はアートプロジェクトであり、日本郵便(株)との関連はありません。

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