女性たちの間で話題になっていたR15指定の映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』が2月13日、ついに日米で同時に封切られた。ネットで公開されている予告編の動画は1億回以上も視聴されており、上映時間の2割近くがセックスシーンというこの映画への注目度の高さがうかがえる。
ストーリーは、男性には指一本触れたことのない、表情にも幼さをたたえた処女の女子大生・アナが、学生新聞の取材をきっかけに出会った大企業の若きイケメン社長・グレイに“資質”を見抜かれ、「SM契約」を結んだ上で、Sのグレイ好みのセックスを重ねていくというものだ。
グレイがアナに提示した契約書は21条に及び、「サービス規定」を定めた第15条は24項にわたる。例えば第15条第2項はこうだ。
〈ドミナント(グレイ)は、契約期間中、サブミッシブ(アナ)を自身の所有物として受け入れ、支配し、服従させ、訓練する。ドミナントは、拘束時間中および合意した延長時間中、性的に、またはそのほかの形式で、随意にサブミッシブの体を利用することができる〉
過激な内容が簡素な文体で書かれてあるのが、逆にこの契約書の異様さを際立たせている。ちなみにタイトルの「フィフティ・シェイズ」とは、「50通りに歪んだ」という意味だ。
原作者は2人の子供がいるイギリス人主婦。趣味で記した物語は電子書籍として世界中に広まり、「マミーポルノ」と呼ばれる主婦が楽しむエロティック小説の新ジャンルを作った。その部数はなんと50か国で1億部を超えた。欧州では過去最大級のベストセラーになっている。
日本も例外ではない。日本語版の出版元である早川書房の担当者がいう。
「日本語版は2012年11月発売で、文庫版と合わせて40万部を売り上げました。弊社作品の読者層は年齢の高い男性が中心ですが、この作品に限っては、購入者は10代後半から30代の女性が中心で、文庫化してからの読者は8割が女性です。SMの世界を描きつつ、古典的な恋愛小説でもある作風が多くの女性読者から受け入れられている理由だと思います」
※週刊ポスト2015年2月27日号