国内

ハンセン病元患者女性 体が不自由でも何でも自分でやりたい

「なぜ人間扱いされないんだろう。偏見と差別の中でも、必ず人間として生きてみせる、負けてたまるかという気持ちだけで本日まで生きて参りました」

 その生涯を綴った、『きみ江さん ハンセン病を生きて』(片野田斉・偕成社・1728円)が発売中の、山内きみ江さん(80才)が、約250人の前でそう話し始めた。

「ハンセン病に対するスティグマ(社会的烙印)と差別をなくすためのグローバル・アピール」が今年1月27日、初めて日本で発表され、きみ江さんはハンセン病元患者として壇上に立った。

 きみ江さんは静岡県藤枝市で、9人きょうだいの3女として生まれた。7才の時に首の付け根に赤みを帯びた斑紋があらわれ、小学校高学年になるとハンセン病の症状が出始めた。1957年にハンセン病と診断され、実家から遠く離れた東京都東村山市の多磨全生園に入所した。22才の時だ。

 隔離政策(らい予防法)が1996年になってようやく廃止となり、2001年には国家賠償請求も認められた。だが、きみ江さんのような高齢の回復者たちはそのまま療養所での生活を続けざるを得ず、今では入所者たちの平均年齢は80才を超えている。

 だが、きみ江さんは差別にも国の誤った政策にも屈することはなかった。入所から半年後に同じ病を患っていた山内定さんと結婚。当時、ハンセン病患者は子供をもうけることを禁じられていたため、定さんはまもなく断種手術を受けることになったが、きみ江さんは66才の時に養女を迎え、孫を抱くこともできた。

 さらには、念願だった療養所の外の世界で生活することも叶えた。病のために右手の指はなくなり、左手の指は全て内側に曲がったまま固まっているが、包丁を手にくくりつけ料理もするし、何度失敗してもミシンの針に糸を通して、裁縫もし、パソコンだって使う。  
「私は10回やってダメでも11回やってみる。どんなに体が不自由でも何でも自力でやりたい」

 そう話すきみ江さんは「いつだって、今が青春よ!」と笑顔を見せるのだった。

※女性セブン2015年3月5日号

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