市場調査会社・富士経済によれば、血中コレステロールなどの低下に使われる高脂血症用薬の各社売り上げを合算した国内市場規模は年間約3800億円(2010年度)。血圧同様、“コレステロール業界”にも巨大市場が存在する。
約4000万人の患者・予備群がそれを支えているわけだが、仮に「総コレステロール250以下は健康体」となれば、指導や受診が必要となるのは20歳以上の日本人の約7%に過ぎず(国民健康・栄養調査、2010年)、“病人”は3300万人も減る計算になる。
何よりも、この国の“常識”に従った食生活が国民の健康を害する危険がある。それこそが問題だ。
血中コレステロールの8割は体内で合成され、食品から摂取されるのは2割といわれている。仮にコレステロールを食品から多量に摂取しても、体内で合成される量が調節されるだけだ。むしろ、コレステロール制限による栄養不足のほうが人体でカバーできないため問題と指摘されている。
動脈硬化学会のガイドラインに従えば、脂質異常症の場合、卵は1日1個も食べられない。しかし卵には体内で合成できない8種の必須アミノ酸が含まれている。卵黄に多く含まれるレシチンは細胞膜や神経組織を構成するコリンの供給源で、老化やボケ防止に役立つとされる。
さらに、免疫力を高めるビタミンAや新陳代謝を活発にするビタミンB群を多く含む。卵からのコレステロール摂取を避けるとそれらの栄養素を摂取する機会まで失ってしまうことになる。
同じくレバーなどの肉類、ウナギやタラコなどの魚介類には動物性タンパク質が多く含まれている。特に高齢者はタンパク質が不足して低栄養に陥る可能性があるので注意が必要だ。
※週刊ポスト2015年3月13日号