だから、いろんなことを我慢して子どもを育て上げたオバハンを見て、男が「女はエライな」と思う、そんなオバハンを賛辞する方向に持っていかなアカンとつくづく思う。「美魔女=絶対の正義」みたいな風潮が強まりすぎて、普通のオバハンが「私らアカンのかな」となったらどうなるか。
たとえば学生街で食堂をやっているオバハンがそれまで週6で営業して学生たちの腹を満たしていたのに、ある日突然「美」に目覚めて「じゃ、私ちょっとエステに行くわ」とお店を休んだら、お腹を空かせた学生たちは困るやろ。
しかもシャネルやエルメスで身を固めた人に「サバの味噌煮です」って飯を出されたらどうする? 割烹着を着たオバハンが出す方が絶対うまいのに。あるいはすべてを子どもに捧げていたお母さんがいきなり、自分をキレイにするために家事をほったらかして、子どもを置き去りにするようになったらいかがなものか。
美魔女もええけど、キレイじゃなくても素敵なオバハンはいくらでもいる。なのに、キレイなだけで褒めるのは、もうヤメにした方がええちゃうんかな。それがひいては日本のためになるということにそろそろ気づくべき。女の人が美だの恋だのに脳の過半数が奪われている国家というのは未来がないと思います。
※SAPIO2015年4月号