その証拠に討論番組は視聴率が取れないから、どんどん減っている。一方、池上彰氏は、冠番組をいくつも持っている。池上氏の特徴は、やさしく解説するとともに、自分の意見を言わないということだ。いま求められているのは、意見ではなく解説なのだ。
リベラルが干されているという認識は、被害妄想だ。冷静に考えれば、干されているのは、右翼も同じだからだ。
いまメディアへの露出を増やそうと思ったら、一番重要なことは自分の意見を言わないことだ。ただ、私はそうしてまでテレビやラジオに出続けたいとは思わない。私は意見を言うために、出ているからだ。
もちろん、池上彰氏が売れている理由は、解説の能力が高いからだ。何年か前に「沖縄になぜ米軍基地があるのか」を解説するという収録があった。私はこう言った。「普天間にしろ、嘉手納にしろ、海兵隊の基地です。海兵隊は先遣部隊なので、そもそも日本を守る機能がありません。彼らが沖縄にいるのは、日本がアメリカに逆らった時に、真っ先に日本を占領するためです」。私の収録はボツになり、代わりに呼ばれた池上彰氏は、どこからも文句のこない、実にバランスのとれた解説をしたのだった。
※SAPIO2015年5月号