片岡:三振に取った瞬間、橋本が電光掲示板を振り返ったんや。
橋本:当時は高校野球でスピード表示はなかったんやけど、プロになった気分で、つい見てもうた(笑い)。それで監督から「プロに行きたきゃテメエだけ行けばいいんだよ」と怒られた。
片岡:お前、名前で呼んでもらったことないやろ。
橋本:ないね。「テメエ」か「コノヤロー」やね。
片岡:一方の立浪は、部で御法度とされる見逃し三振をした後でも、監督から「タツ、スライダーか?」って聞かれるだけ(笑い)。凡打しただけでも謝ってた僕からしたら羨ましかった。
橋本:まあ監督は1人1人の性格を見ていたんやろうな。立浪はいつも冷静で、しんどそうなところを見せないヤツやったし。
片岡:当時、苦しい時や辛い時は、寮の屋上へ上がって皆で泣いていた。「しんどいなァ」「辞めてやろうかな」とか愚痴をいってね。でも立浪だけはそんな時でもマスコットバットを振っていた。
ある時、僕が実家の京都のほうを眺めながらしみじみ泣いていると、立浪がやって来て「片岡、そっちは和歌山や。京都は反対や」と教えてくれた。お前、どんだけ冷静やねんと思ったね(笑い)。
※週刊ポスト2015年5月8・15日号