いってみれば、誤った療法は薬の売り上げと患者を増やし、それだけ“お客さん”を得る製薬会社と医者が儲かる仕組みになっている。だからこそ、治療薬のリスクは医者もメーカーもあまり重視しないのは当然で、患者自身がより注意を払うべきなのだ。
老年医学会は、高齢者が中止を考えるべき薬剤のリストを作成する理由を、〈高齢者で薬物有害事象の頻度が高く、しかも重症例が多い〉からと「ガイドライン(案)」の中で説明している。当然ながらどんな薬にも副作用はあるが、年齢を重ねるとリスクが大きくなる。東京薬科大学薬学部・加藤哲太教授が解説する。
「高齢になると肝臓や腎臓の機能が低下し、薬の成分の代謝、排出がうまくいかなくなる。その結果、薬が効きすぎてしまう副作用が出やすくなります。老年医学会のガイドラインでは、そうしたリスクが有効性に比べて大きいと考えられる薬をまとめた『ストップ』のリストを作った。英字ではSTOPP(※)という表記で、使用に際してきちんとチェックを行ない、場合によっては中止も視野に入れるべきという意味です。
糖尿病治療で使われる血糖値を下げる薬であれば、下がりすぎて低血糖状態に陥るリスクが高くなります。低血糖になると神経系が正常に機能しなくなり、震えや動悸などが起きる場合がありますし、ひどい場合は倒れて昏睡状態に陥ることもあります」
【※注 STOPP:「Screening Tool of Older person’s Potentially inappropriate Prescriptions」の略】
※週刊ポスト2015年5月29日号