──幕が開いたとたん、フィルムレスはすさまじいスピードで進むわけですね。

古森:進むし、いろんなコンペティション(競争)が発生しました。デジタル化って、信号に変えるわけだから、いってみれば標準化です。アナログと違って、端的にいうと、部品を買ってきたらあとは組み立てればいいだけなので、激しい価格競争が起こったのです。毎年15%ずつ値段が下がるような激しい競争です。

 われわれだけでなく、カメラメーカーや家電メーカーも参入し、すごい戦いになっていった。その中でフィルムもあっという間になくなった。レコードがCDに変わったより速いぐらいだったでしょう、もう4~5年でほとんどデジタルに移っていった。

──まさかここまでのスピードで時代が進むとは、古森さんご自身も……。

古森:そこまでだとは思わなかったですね。

──その真っただ中で社長として何を考えましたか。

古森:まず最初は、これからどうなるかって読むことです。カラーフィルムなどをやっていた写真の部門に、この先どれぐらいの落ち方をするんだって予測させました。すると、想定以上に悲観的な数字が出てきた。私もそうなるだろうと思いました。だから、これはもうしょうがないと、他のことで会社は生き延びていくしかないと。

──その読みは、ほぼ当たったわけですね。

古森:当たった。それを補うような次のビジネスを見つけないと、もたないことは明らかでした。富士フイルムの既存ビジネスの中で伸びそうなものは何か、それとは別に、まったく新しく始められそうなものは何か、そういうリサーチをしました。新たな成長戦略の構築です。

※週刊ポスト2015年6月12日号

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