家電量販店の苦戦が続く中、業界最大手のヤマダ電機が46店舗を5月末で一斉閉鎖すると発表した。2015年3月期連結決算では、税引き後利益が前年比50%減の93億円。大幅な減益で店舗閉鎖に追い込まれた格好だ。家電ジャーナリストの安蔵靖志氏が語る。
「ヤマダは1000店舗を超える巨大な店舗網を背景に、大量仕入れによる低価格販売を展開。地方都市や郊外で躍進してきた。
しかし、“3つの需要の反動”が予想以上に大きかった。昨年の消費増税前の駆け込み需要、アナログ放送停止による薄型テレビへの買い換え需要、ウィンドウズXPのサービス終了によるパソコンの買い換え需要です」
反動による影響だけならまだしも、家電業界の構造そのものが限界に達しているとの指摘もある。
「最大の敵はネット通販です。アマゾンや最安値を検索できるサイトの影響で、客の商品購入の経路が大きく変わってしまった。それに加えてヤマダの場合、高齢化や若者の自動車離れの影響で、郊外型店舗の売り上げ増が望めないのが痛い」(業界関係者)
業界全体が実店舗での経営に苦しむ中、ネットに力を入れて成功しているのがヨドバシカメラである。
非上場のため業績は公開されていないが、『月刊ネット販売』(宏文出版)の調査によると、2013年度のネット通販サイト「ヨドバシ・ドット・コム」の売上高は650億円で、ヨドバシカメラの総売上高の9.4%を占める。さらに2014年度には、ネット通販の売上高が約1000億円、2016年度には2000億円に達する見込みというからすごい勢いだ。
当然、ヤマダもネット通販に注力するのではないかといわれたが、発表した業績回復に向けた対策は意外なものだった。
「年内をめどに東京・中央区八重洲に都市型店舗を出店するなど、15店舗の新規出店を予定している」(企画広報室)
ネット化ではなく都市化に活路を見出すというわけだ。狙いは「免税専門店舗等への業態転換」(同前)としているように、中国人観光客の“爆買い”だ。
「都市部に店舗を集中させ、売り上げ効率を上げたビックカメラの成功を意識しているものと思われます。ビックは中国人観光客をうまく掴んだ。少子高齢化で人口減少が続く日本人が相手ではジリ貧なので、ヤマダも“爆買い”に期待するしかないということでしょう」(経済紙記者)
業績改善はネットか中国人頼み──ヤマダと家電業界の窮地は、日本の小売業界全体が抱える構造的課題を象徴している。
※週刊ポスト2015年6月12日号