国際情報

中国で跋扈する和牛密輸犯罪集団 5か国経由で価格は10倍に

 中国の経済成長はあらゆる問題を内包しているが、旺盛な「肉食化」にもその負の側面は伺われる。現地の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏が指摘する。

 * * *
 2015年6月11日、上海市公安局は大規模な牛肉密輸グループを摘発し、容疑者30人の身柄を拘束、うち17人を逮捕したと発表した。密輸された牛肉13トンも押収されたという。

 上海ではかねてから日本から密輸される牛肉が問題視されていたが、大規模な犯罪グループがかかわる組織的な密輸事件とあって大きな注目を浴びた。なかでも組織のトップとして日本人の名前(中国メディアには「日本東藏株式会社の山内」とされる)も浮上したことで中国国内のメディアも大きく扱うニュースとなった。

 事件の概要説明に立った上海市公安局食品薬品犯罪捜査総隊の銭洪偉副支隊長によると、事件発覚のきっかけは、2014年10月、長寧公安分局管轄内にある一軒の日本料理店「響家」が、“神戸牛あります”との看板をかかげていたことだった、という。

 中国は原則、日本からの牛肉の輸入を禁止--2001年、牛海綿状脳症(BSE)を理由に日本産牛肉の輸入と販売を禁止--している。このことから疑問を持ち、約3か月半の内偵の末に背後に密輸組織があることを突き止めたという。

 密輸の具体的な手口としては、まず日本からカンボジアに輸出した牛肉を中国語の書かれた箱に詰め替え、その後タイのチェンマイに運搬。さらに果物用のコンテナに積みかえてラオスへ輸送。ラオスから中国の雲南省へと陸路で運ばれた後に、昆明で加工肉として再度梱包し直され、上海へと空輸されるという手の込んだものだった。

 10月からの3か月半の間にも計100トン、金額にして3000万元相当(約6億円)の牛肉が密輸されたとされた。

 これまでの日本から牛肉密輸事件といえば、たいていは空港の荷物検査で見つかり没収されるというもので、日本人がひっかかることも珍しくなかった。

 それが今回これほどまでに大規模なものになったのは、やはり中国都市部の旺盛な牛肉需要――とくに日本のブランド牛に対する――が相当に強く、大きな儲けにつながるためだと考えられた。

 新華ネット上海の記者が独自の調査を行ったところによると日本で1キログラム200元(約4000円)から300元(約6000円)で売られている牛肉は、5つの国を経由する間に2000元(4万円)から3000元(6万円)になるという。記事のタイトルでは、最高で20倍とも記されている。

 それにしても日本から牛肉密輸は増えるばかりで、この2年、平均で200万トンの密輸牛肉が押収されているが、それは2014年の中国国内で生産された牛肉689万トンの3分の1にも届こうかという勢いだというから深刻だ。

 だが、少し考え方を変えてみれば、日本から牛肉を輸入禁止にしたBSEっていつの話なのか(日本でのBSE患畜確認は2001年9月)。むしろ、もうきちんと輸入を許可すべきなのではないか、とも思える。

関連キーワード

トピックス

記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO
《国分太一コンプラ違反で解散のTOKIO》山田美保子さんが31年間の活動を振り返る「語り尽くせぬ思い出と感謝がありました」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン