国内

名もなき庶民が日本の主役だった「田中角栄の時代」があった

没後20余年を過ぎた田中角栄の言葉は今も強く響く

 かつて「田中角栄の時代」があった。それは名もなき庶民がこの国の主役だった時代である。

〈政治は、地表を吹きすぎていく風のようなもので、国民にとって邪魔になる小石を丹念に拾って捨てる、それだけの仕事である。理想よりも現実を見つめ、国民がメシを食えるようにすることが大事だ〉──角栄語録の一節には政治の原点がそう語られている。

 政治家の役割は、安倍晋三首相のように「オレが最高責任者だ」と国家・社会を自分の思想に染めようとすることではない。あくまで“政治家は脇役、主役は庶民”という徹底した民主主義の思想がそこにはある。

 1972年、「今太閤」「庶民宰相」と呼ばれ、国民の熱狂的な歓迎の中で首相に就任した角栄だったが、人気とは裏腹に、当時の日本社会は高度成長のピークを過ぎ、大都市と地方の格差の増大、公害の深刻化といった社会のひずみが表面化して、国民の閉塞感と政治への失望が広がっていた。それは現在の日本が置かれた状況と重なる。

 あの時代、角栄の目はまっすぐ国民生活の再生に向けられた。

 彼の政治手法がそれ以前やその後の門閥政治家、官僚出身政治家と違ったのは、自分たちの役割は国民のためにならない法律、時代に合わない法律をつくりかえて国民生活を豊かにすることにあるという強い信念があったことだろう。

「政治は数、数は力」と自民党内で勢力をのばしながらも、数に驕る手法ではなく、むしろ多様な意見に耳を傾け、自分と意見が違っても有為な人材であればどんどん登用した。苦労人ならではの人間的な幅広さと奥行きがあった。

 だからこそ、多くの政治家が集まり、官僚たちも角栄のブレーンとなって政策の行き詰まりを突破しようとした。その1人だった下河辺淳・元国土事務次官は角栄登場の意味をこう語っている。

「日本社会のひずみはもはや西洋から輸入された東大法学部の学問、政治、法律では解決できなかった。田中角栄は1人の日本人、新潟県人として発想し、必要なら六法全書さえ否定する行動力があった」

 もちろん、「六法全書の否定」とは、安倍首相のように憲法の解釈論をこねくり回して自衛隊を海外に派遣しようという“官僚的ご都合主義”とは全く違う。

関連キーワード

関連記事

トピックス

茨城県水戸市のアパートでネイリストの小松本遥さん(31)が殺害された事件で1月21日、元交際相手の大内拓実容疑者(28)が逮捕された(知人提供)
《水戸市ネイリスト刺殺》「ぞろぞろ警察がきて朝から晩まで…」元交際相手の大内拓実容疑者(28)“逮捕前夜” 近隣住民の知人は「ヤンチャな子が集まってた」と証言
NEWSポストセブン
フリースタイルスキー界のスター、アイリーン・グー選手(時事通信フォト)
〈完璧すぎる…〉雪の女王が「ビキニ一枚写真投稿」で話題に 22歳の谷愛凌選手、ミラノ冬季五輪へ スキー×学業×モデル“三刀流”の現在地
NEWSポストセブン
《解散強行の波紋》高市首相、大学受験シーズンの選挙でタイミングは「最悪」 支持率高い10代の票は望めずか
《解散強行の波紋》高市首相、大学受験シーズンの選挙でタイミングは「最悪」 支持率高い10代の票は望めずか
NEWSポストセブン
歌舞伎役者・中村鶴松(本名・清水大希)容疑者
《歌舞伎・中村鶴松が泥酔トイレ蹴りで逮捕》「うちじゃないです」問題起きたケバブ店も口をつぐんで…関係者が明かす“中村屋と浅草”ならではの事情
NEWSポストセブン
ブルックリン・ベッカムと、妻のニコラ・ペルツ(Instagramより)
《ベッカム家に泥沼お家騒動》長男ブルックリンが父母に絶縁宣言「一生忘れられない屈辱的な記憶」は結婚式で実母ヴィクトリアとの“強制ファーストダンス”、新婦は号泣
NEWSポストセブン
初場所初日を迎え、あいさつする日本相撲協会の八角理事長(2026年1月11日、時事通信フォト)
土俵が大荒れのなか相撲協会理事選は「無投票」へ 最大派閥・出羽海一門で元横綱・元大関が多数いるなか「最後のひとり」が元小結の尾上親方に決まった理由
NEWSポストセブン
一般人を巻き込んだ過激な企画で知られるイギリス出身のインフルエンサーのボニー・ブルー(Instagramより)
「行為を終える前に準備」「ゴー、ゴー、ゴーです」金髪美女インフルエンサー(26)“12時間で1000人以上”を記録した“超スピード勝負な乱倫パーティー”の実態
NEWSポストセブン
米倉涼子が書類送検されたことがわかった
《5か月ぶりの表舞台直前で》米倉涼子、ギリギリまで調整も…主演映画の試写会前日に“書類送検”報道 出席が見送られていた
NEWSポストセブン
天皇皇后、愛子さま
《溜席の着物美人が2日連続で初場所に登場》6年ぶりの天覧相撲に感じた厳粛さを語る 力士のみならず観客も集中し、「弓取り式が終わるまで帰る人がいなかった」
NEWSポストセブン
肺がんのため亡くなったフリーアナウンサーの久米宏さん(時事通信フォト)
《キー局に就職した有名アナも》久米宏さんに憧れて男性アナウンサーを目指した人たち 爆笑問題・田中はTBSラジオでのバイト時代に「久米宏さんになりたかった」
NEWSポストセブン
米倉涼子が書類送検されたことがわかった
《ゲッソリ痩せた姿で取調室に通う日々》米倉涼子が麻薬取締法違反で書類送検、昨年末に“捜査終了”の匂わせ 元日にはファンに「ありがとう」と発信
NEWSポストセブン
 相撲観戦のため、国技館へ訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2026年1月18日、撮影/JMPA)
「美しすぎて語彙力消失した」6年ぶりの天覧相撲 雅子さまは薄紫の着物、愛子さまは桜色の振袖姿でご観戦
NEWSポストセブン