では、なでしこジャパンはどんなドラマ?
選手たちは伝統工芸の職人のごとく、地道に細かい努力をコツコツと積み重ねてきた。耐えて耐えて1点をもぎ取っていく。そして逆境でこそ発揮される、泥臭い強さ。ドラマにたとえれば『おしん』かも。ただし『おしん』に忍耐話はあっても、なでしこたちのもう一つの面「華やかさ」や「美しさ」がない。
ピンク色のスパイク、弾むポニーテール、冷静な表情と輝く瞳。なでしこの明るさ。だとすれば…『おしん』の忍耐物語に、『篤姫』や『ベルサイユのばら』の優雅さ、華やかさ、躍動感を加えたい。
そして今回のなでしこには注目すべき新戦術が。その名も「なでしこトレイン」。みなさん目撃したことでしょう、ゴールネット前でのセットプレーの際、縦一列に並んで布陣を作る奇妙な姿を。まるで、子どもの電車ごっこ。これが相手を攪乱する。
ずらりと一例に並ばれてしまうと、次に日本の選手がどう動くのかが予測できない。マンツーマンでディフェンスをしようにも、とまどう。「煙に巻く」という意味では、『忍者ハットリくん』か。
と、この原稿を書いている段階では、まだ7月2日のイングランド戦の結果は未知数です。どうか、なでしこの「ドラマツルギー」が決勝戦で頂点まで上り詰めますように。心から祈ります。