――整形をする人は増えているのでしょうか?
北条:レーザーによるシミ取りは医療行為なのでプチ整形に入りますが、それを含めると経験者数はかなり多いと思います。消費社会をリードしたバブル世代の女性たちが50代になり、いつまでも若々しくいたいとアンチエイジングを考えるようになって需要が増えていることを考えれば、これからも増えていくでしょうね。
――アンチエイジングを考えたら、永遠に終わらない気がしてきました。
北条:自分であきらめをつける時点がない限り、整形は有効な手段であり続けます。でも、
依存症につながるかは、人によります。費用や、手術による腫れを鎮めるダウンタイムをどのくらいとれるか、整形と新しい洋服、エステならどれにするか等、いろんなものを天秤にかけて決めている方がほとんどです。人間は必ず老化します。それに抗うための新技術も次々と登場し、最近ではiPS細胞のような再生医療分野の技術を応用したものもあります。
――最近は整形を公表する有名人が目立ちますが、この動きは広まるのでしょうか?
北条:今は有名読者モデルなどコンプレックスを公表することでファン獲得につながる人に限られていますが、アイドルなどには広がるかもしれませんね。弱さを公表して克服する気持ちに共感しファンになる人たちがいるからです。ただ、一般人には広がらないでしょう。公にしてもトクになることがないですから。社会人になればなおさらです。罪悪感がありつつも、隠す人がほとんどだと思います。
――整形がこれほど身近になっても罪悪感があるんですか?
北条:隠しているという罪悪感ですね。
――利用者が増え有名人では公表する人も増えているのに、美容整形に対して微妙な居心地の悪さが残るのはどうしてでしょうか?
北条:たとえば同じ脱毛でもエステと厚生労働省に届け出る標榜科である美容整形の両方で体験できます。エステではなく整形に取り組むとき、本人は金額や安全性など秤にかけて悩んだ末に決めますが、他人からは「整形した」という結果しか見えないため、何も悩まずにするりと整形しているようにみえる。美容整形は、「美容」か「医療」かハッキリしない領域に位置します。この外側からみたあいまいさが、もやもやした感情を抱かせる原因なのでしょう。
おそらく、ある程度うしろめたいものという考えは変わらないと思います。その後ろめたさを全部引き受けて、どうするのかを自分で選ぶものが美容整形なのでしょう。
■撮影:青山裕企
●北条かや(ほうじょう かや)1986年、石川県金沢市生まれ。同志社大学社会学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。みずからキャバクラで働き調査を行った経験をもとに『キャバ嬢の社会学』を上梓。最新刊は『整形した女は幸せになっているのか』(星海社新書)。社会系・経済系の記事を寄稿・提供する傍ら、「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」(NHK)、「モーニングCROSS」(TOKYO MX)などに出演。