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2015.07.13 16:00 週刊ポスト
胃癌患った外科医 「時代遅れのバリウムより内視鏡検診を」
年間1000万人以上が受けるバリウム検査では、多くの胃がんの見逃しや死亡事故が起きている。
「僕の主治医が内視鏡で見つけてくれたのは、8ミリの印環細胞がんという初期のスキルス性胃がんでした。胃粘膜の色が少し違っていたんです。凹凸がないから、バリウム検査では絶対に見つからなかった」
日本を代表する外科医だった武藤徹一郎・がん研有明病院名誉院長は、2006年に受けた内視鏡検査で胃がんが早期発見され、胃の粘膜切除を受けて完治した。
バリウム検査は、X線画像のシルエットに現われる凹凸で、がんを見つけ出す。ただし、ある程度進行しないと凹凸が出ないので“毎年受けていたのに、見つかった時には手遅れ”というケースは多い。
一方、内視鏡は鮮明なハイビジョン画像になり、胃粘膜のわずかな変化を特殊な色素で強調するなど、技術革新が著しい。鼻から挿入する細くてしなやかな経鼻内視鏡は、「内視鏡は苦しい」というイメージを一新。発見率もバリウム検査の3倍以上と報告される。武藤医師が自身の経験を振り返って語る。
「僕が外科医を引退する決意をしたのは、アメリカの腹腔鏡手術を見た時だった。日本は開腹手術が主流で僕も腕に自信があったけれど、腹腔鏡手術は出血量が10分の1で、次元がまったく違ったからだ。胃がん検診も同じで、時代遅れのバリウムは発見精度に優れている内視鏡に代わる必要がある。こうやって元気にしている僕が生き証人だ」
胃がんの早期発見には、内視鏡検査がベストな選択である。ただし、内視鏡検査も絶対安全ではない。医師であれば誰でも内視鏡を扱えるのをご存じだろうか。専門の資格は必要ないため、診断の技術格差が極めて大きいのだ。
バリウム検査同様、内視鏡検査においても深刻な偶発症(医療上の検査や治療に伴って生じる不都合な症状、事故)が起きている。
日本消化器内視鏡学会による調査では、2003~2007年の5年間で、上部消化管(食道、胃)検査740万件のうち、偶発症は372件、発生頻度は「0.005%」だ。内視鏡で咽頭付近を突き破る穿孔(臓器に穴を空ける重大事故)が最も多く、14人が死亡した。
体内の奥深くに内視鏡を入れる以上、事故のリスクはゼロではないことを我々は知るべきだ。
●文/岩澤倫彦(ジャーナリスト)と本誌取材班
※週刊ポスト2015年7月17・24日号
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