これは、ピロリ菌の感染有無と胃粘膜の萎縮度(ペプシノゲン値)を組み合わせて、「ピロリ菌未感染者で胃粘膜の萎縮がないA群」を胃がん検診から除外。残りをリスク別にB群からD群にグループ分けして、定期的に内視鏡検査を実施するという手法だ。
特徴は、(1)血液検査で安く簡単に胃がんリスクが判明、(2)胃がんの高い発見率、(3)高い費用対効果などが挙げられる。
東京・目黒区では、2008年から胃がんリスク検診とバリウム検査の選択制にしたところ、5年間で約3万人がリスク検診を選択、73人の胃がんが発見された。発見率にすると「0.24%」、同時期のバリウム検査の実に4倍だった。
胃がんリスク検診にかかる一人分のコストは4300円、バリウム検査が1万3100円。リスク検診は毎年受ける必要がないため、これを1人あたりの発見コストに換算すると「180万円:2100万円」と大きな差が開く。
乾医師らのグループが行なった試算によると、日本全体でリスク検診に変更し、同時にピロリ除菌治療で胃がん予防をすると、5年間で医療費は4200億円削減できるという。
●文/岩澤倫彦(ジャーナリスト)と本誌取材班
※週刊ポスト2015年7月17・24日号