ビジネス

冷凍食品新聞編集長が「これは凄い」と断言したものは冷凍炒飯

 業界紙、専門誌のディープな世界を紹介するこのコーナー。今回は冷凍食品業界の現在を伝える「冷凍食品新聞」をピックアップします。

『冷凍食品新聞』
創刊:1969年
発行:毎週月曜日
部数:2万5000部
読者層:食材メーカー、食材問屋、ラーメン店店主、一般人
定価:3万6288円(1年分、送料込)
購入方法:発売元・冷凍食品新聞社に直接注文。

「まあ、これを見てくださいな」。山本純子編集長(57才)が、記者の前に広げたのは、新聞より大判のカラーカタログ『病院、介護、老健市場向け食品 おすすめ商品一覧』だ。

 焦げ目がしっかりついた“柔らか焼きぎょうざ”や、見るからにジューシーな“楽らく匠味鶏もも皮なし切り身”、“HG豚やわらかカツ”はふわふわのとき卵にくるまれ、かつ丼に変身している…。

 これらはすべて冷凍食品を調理したもので、「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」とランク分けされている。

 高齢者の食欲が、めらめらと湧く様子が目に浮かぶようではないか。

「厚焼き玉子やかぼちゃまんじゅうなど、形を保ったまま病院の厨房に運べるのも冷凍食品の利点ですね」と山本さん。

 入院設備のある病院では、栄養士が患者の病状に合わせた食事を作っているが、冷凍食品はメニュー作りに大いに役立っているのだそう。

 現在、日本の冷凍食品マーケットは、年間270万トン。

「そのうち6割は業務用として流通しているんですよ。レストラン、食堂、社員食堂、学校給食…。私たちは知らない間に素材の一部として冷凍食品を食べているのです」

 冷凍食品には、以下の4つの定義がある。

【1】不用な部分を捨てるなど、前処理をしている。
【2】急速冷凍をしている。
【3】パックしてある。
【4】マイナス18℃以下で保管・流通して店頭に並んでいる。

「たとえば【1】ですが、一から筑前煮を作ろうとしたら、里いも、れんこん、にんじんを皮むきして刻んで、下ゆでして…。えらい時間がかかるでしょう?

 その点、冷凍食品は素材をちょうどいい具合に下ゆでして、パックした商品があります。だししょうゆに鶏肉を入れて煮たら20分後には筑前煮の出来上がり。洋風スープの具材もありますよ」

【2】の急速冷凍は、素材の組織を壊さず、水分を細かく凍らせてしまうので、おいしさを逃がさない。【4】のマイナス18℃以下では菌が繁殖しないので、保存料がいらない。

 最近の業界の話題は?と聞くと、山本さんは年に2回、新聞の折り込み付録につける、『家庭用冷凍食品新商品一覧』のカラーカタログを広げて「これ!」と指さした。ニチレイフーズの“本格炒め”だ。

「焼きおにぎりや、うどん、たこ焼きなど、炭水化物ものは冷凍と相性がいいんです」と前置きした上で、「その中でも、これはすごい!」と言う。

 専門店の高級炒飯のご飯がパラパラして油っぽくないのは、中華鍋の上に250℃の“熱風空間”ができ、そこをご飯が通過するからだというが、この商品は「それを工場で再現したんです。専門店の味、いやそれ以上かも」。

 山本さんは、家庭でするのと同じ工程を、マジメにコツコツしている冷凍食品業界を「健気」と語る。

 新聞には、『冷凍めん、明るい未来 品質、安全の要望に応える』と題した記事でこう綴られている。

〈「…冷凍めんは毎年二桁の伸びで成長してきたが、ここにきて成長が鈍化してきたかと思う。…業界の踏ん張りどころだろう。日本食に世界の注目が集まっており、めん類も日本食の一部だ。…日本の食品が評価されるのは、衛生的で美味しいのも安全性もあたりまえだから。しかし一昨年来『安心できない』という事象もある。〉

 2013年に起きた“農薬混入事件”について、業界の幹部が振り返り、安心を得るための方策を語っていた。

「こうした事件から目をそらさず、業界発展の方向を示していこうというのが、食品業界紙の使命ですからね」

 最後に、冷凍食品の加熱のコツを聞くと、「電子レンジは、小まめに掃除をする人、しない人によって能力が違うし、製品にも個性があります。まず表示通りの加熱時間で試して、その後、10秒単位で加減して、『ジャスト!』を見つけてください。味にぐっと差が出ます」。

 さっそく、試してみますか。

※女性セブン2015年7月30日・8月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン