2012年の衆議院解散時(11月16日)は1ドル=80円の水準だったが、今年6月5日には一時125円台と、円の価値は40%程度下落した。なぜ2年半で円の価値がそれほど下がったのか。経済学者で投資家の小幡績氏が、急激に為替が動く理由を解説する。
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なぜ2年半で40%もの暴落が起きたのでしょうか。理由は2つ。ドル高と円安です。“当たり前でしょ”と言われそうですが、2つは違うのです。ドル高により、円はドルに対して暴落しましたが、ユーロや豪ドルに対しては“多少の円安”程度に留まっています。
つまり、世界的に米ドルが上昇したのです。米国の景気が回復し、米国の中央銀行は今後、金利を引き上げると見込まれています。金利が高くなれば運用して得られる利子が増えるので、世界の資産がドルにシフトし、「ドル買い」「ドル高」となるのです。
一方、円安も同時に進みました。安倍政権が「アベノミクス」を掲げ、すでに量的緩和を行なっていた日銀に対し、さらなる大幅な金融緩和でインフレを起こすよう暗に(あからさまに、という解釈もあります)迫りました。安倍政権に任命された黒田東彦・日銀総裁は「異次元緩和」を行ない、円は下落を始めたのです。
ただし、日銀の激しい金融緩和が円安をもたらす前から、世界的な流れが先に存在していました。2012年8月以降、欧州危機が和らいでユーロは上昇。リスクを取ってでも資産を殖やそうという動きが広がり、世界的な株価の上昇とともに、リスク回避型の通貨だと思われている円が売られました。この流れの中で政府・日銀の過激な政策が、さらに勢いをつけたのです。
昨年10月末以降、再度急激に円安が進みました。誰も必要と思っていなかった追加緩和を日銀が行ない、不意を突かれた投資家は大きく円売りに動きました。
ではなぜ、日銀の緩和で円安になるのでしょうか? 理論的には、金利が下がり、円で資金運用する魅力が落ちるという理由が一つ。もう一つは「インフレが起こって、通貨の購買力が下がる」ことです。