ビジネス

ペヤングV字回復の秘訣は「スピード」と「誠実さ」にあった

「ゴキブリ混入」で昨年12月から今年6月初めまで販売を中止していた即席めん『ペヤングソースやきそば』が、6月時点で即席カップめん分野での国内シェア1位を獲得し、大復活を遂げている。

「おかげさまで6月は販売再開からわずか12日で販売中止前の月単位の売り上げとほぼ同額となりました。以前の倍の勢いで売れており、我々も驚いています」(『ペヤング』を販売する、まるか食品広報担当)

 V字回復の秘訣は「スピード」と「誠実さ」にある。

 ツイッターでゴキブリ混入の写真が出回ったのは昨年12月2日の夜。その翌日にまるか食品は混入が起きた現物を回収した。さらに、混入から9日後の11日には全商品の販売中止と自主回収を決めた。

「まるか食品の対応はなかなかできるものではない」と話すのは、リスク管理に詳しいリスク・ヘッジ代表の田中辰巳氏だ。

「問題発覚当初は『ネット上の画像を取り下げてくれ』と依頼するなど、ベストの対応だったとはいえません。が、製造過程で混入した可能性が明確でない段階にもかかわらず、全商品の販売中止と自主回収を決定し、さらに半年間にわたり製造を中止したのは正しい選択だった。

 まるか食品のような数種類の商品の売り上げに依存する中小企業には通常できない対応です。迅速かつ思い切った対応が消費者の信頼を得ました」

「ペヤング大復活」の“隠し味”はそれだけではない。「誠実さ」も大きな要因だ。

 実は販売中止期間中、同社の丸橋嘉一社長は、すぐに小売店へお詫び行脚を行なった。謝りに行ったにもかかわらず、小売店から励ましの声をかけられることも少なくなかったという。

 それも関係したのだろうか、販売再開後に一部小売店で専用の棚が作られるなどの“ペヤングフィーバー”が起きたのは記憶に新しい。

「危機管理において誠実な対応というのは絶対に欠かすことのできない要件です。素直に非を認める適切な対応を行なうことにより、失墜したブランドイメージを回復し、売り上げを維持・増加させることにもつながります」(前出・田中氏)

 さらに“身内”に誠実であったことも奏功したようだ。販売再開までの間、まるか食品の社員は販売できなかった商品や回収された商品を「リサイクル」に回す仕分け作業に追われたが、

「社長自ら工場に来て仕分けを率先して行なっていた。そんな姿を見せられては、我々が頑張ってやらないわけにはいきませんでした」(まるか食品の社員)

 販売中止の間、社員の解雇や減給は行なわず、年末には賞与も支給した。いつでも販売再開できるよう、社員のモチベーション維持にも努めたのだ。

※週刊ポスト2015年8月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
警視庁がオンラインカジノ店から押収したパソコンなど(時事通信フォト)
《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば”安心”だと思った」理由とは?
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン