「チョコレートを摂取する前に比べて、4週間後には血圧が下がることがわかりました。特に血圧が高めな人で大きく下がり、平均すると『高血圧ではない』領域まで低下したのです。また、血液検査の結果から、動脈硬化のリスクを低減させる可能性があることもわかりました」(大澤教授)
さらに同調査で明らかになったのは、認知症に対する可能性。ヒトの脳、特に記憶や学習を司る「海馬(かいば)」にはBDNF(脳由来神経栄養因子)というたんぱく質が多く存在している。このBDNFは加齢とともに減少するほか、うつ病やアルツハイマー型の認知症の患者でも減少するが、大澤教授らの研究では、高カカオチョコレートを摂取した前後で、血液中のBDNFが増加したことがわかったのだ。
「今回の研究では、一般の市民約350人に協力していただき、普段の食事に加えて、カカオ分72%の高カカオチョコレートを毎日25g食べてもらいました。これまでの研究は、欧米人対象のものが多く、そのほとんどが毎日大量のチョコレートを食べた結果を検証するというものでした。今回、日本人を対象に、少量のチョコレートでこのような有益な結果が出たことに、私自身も驚いています」(大澤教授)
昨今は食品大手の明治など、カカオ豆の産地選びから加工まで、全工程を一貫して行う「ビーン・トゥ・バー」に取り組むメーカーも出てきており、ポリフェノール量が多くても、苦みが控えめな高品質の高カカオチョコレートが続々と登場している。健康のために“甘いものを控える”のではなく、“毎日チョコレートを食べる”のが健康習慣になりそうだ。