国内

自衛隊の戦闘糧食 香りやコク絶品で「世界一」との呼び声も

さんまピリカラ煮ほかの糧食パック

 兵士が戦場で食べるために作られた戦闘糧食、通称ミリメシ。実は自衛隊の戦闘糧食が“世界一”と言われているのをご存知だろうか。噂を確認すべく取材班は陸上幕僚監部市ヶ谷駐屯地に向かった。

 今回、紹介するのは陸上自衛隊の「糧食II型」と呼ばれるレトルトパック仕様のもの。1食分としてご飯パック2個、副食1~2パック、プラスチックの先割れスプーン1本が1袋にまとめられている。かつては缶詰タイプの「糧食I型」が主だったが、時代の流れと共に進化し、レトルトパックが主流となりつつある。

 見た目は簡素なII型だが、軽くて食器もいらず機能的。しかし、普通のレトルトパックと違い、密閉性が高いため、手で開けることができない。ナイフで開ける必要がある。「作戦の内容によっては、これを背負って長期間移動するわけですから、長時間の摩擦、荷重、衝撃によって開いてしまってはダメなんです」(陸上幕僚監部広報室)

 戦闘糧食とはいってもレトルトパックなら味も想像しやすいが、ご飯もおかずも香りとコクが市販品とは別格。山菜ごはんはもち米風で、山菜の香りとみりんの甘味が絶妙。ピリカラ煮のさんまは柔らかく、野菜麻婆の辛みは抑え塩味しっかり。辛みで余計な水分をとるのを防ぐためだ。

「糧食II型」のメニューは和洋中をとり混ぜ21種類。さば味噌煮、かも肉じゃが、やきとり、ハヤシハンバーグ、肉団子等、1日3食で1週間は同じものが出ず、飽きない。

「仕事柄、他国の糧食も試食しますが、これほどのレベルのレトルトパック技術は難しい。日本だからこそ作れる糧食だと自負しています」(同装備部需品課)

「厳正な保存検査を行っているので品質を保ったまま長期保存が可能です。衝撃にも強く、簡易で高性能の加熱材もついています」(同広報室)

 そのままでも食べられるため、夏は温めない隊員がほとんどだという。

『世界のミリメシを実食する』著者の菊月俊之氏も「日本の糧食は各国軍で一番との評判。クラッカーなどが主食の欧米に対し、日本は米が主食で保存などが技術的に難しいのに、限られた予算でバランスよく開発されている」と語る。

 東日本大震災時には戦闘糧食が足りず市販のレトルト食品で代用したが、口内炎を発症する隊員が続出、急きょビタミン剤を配布した。戦闘糧食は素材の良さと栄養素の充実にも配慮がなされている。

「自衛隊員は体が資本ですから、おのずと“食”が活動を支える基本となります」(同装備部需品課)。自国を守るのに重要な隊員の「食」。ここでも日本の技術が存分に生かされている。

※SAPIO2015年8月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン