国内

安部首相が気にした「戦後70年天皇談話」に関し浮上した説

 戦後70年の8月15日、天皇皇后両陛下は強い覚悟をお持ちになって、『全国戦没者追悼式』が執り行われる日本武道館を訪れていた。臨席された両陛下の緊張感は、会場全体を包み込んでいた。

 陛下は毎年、追悼式で戦没者の冥福を祈り、遺族の悲しみに寄り添うおことばを述べられている。そして今年、安倍首相の式辞が終わり、1分間の黙祷を捧げた後、陛下はこうおことばを続けられた。

「先の大戦に対する深い反省と共に、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心からなる追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」

 戦後50年だった1995年以降、おことばは、ほぼ同一のものだった。しかし今年は、初めて「深い反省」に言及するなど、例年より踏み込んだ内容に大きく変えられていた。今年のおことばには大きく4か所の文言が追加された。「戦争による荒廃からの復興、発展」、「平和の存続を切望する国民の意識」、「戦後という、この長い期間における国民の尊い歩み」、「先の大戦に対する深い反省」──。

「このおことばは直前まで陛下が何度も何度もご自分で推敲されていたようです」(宮内庁関係者)

『戦争をしない国 明仁天皇メッセージ』(小学館刊)の著者・矢部宏治氏は、陛下のおことばの真意をこう推し量る。

「これまでほぼ同一だった追悼式のおことばがここまで大きく追加されたことは、きわめて異例のことです。これは、現在の安倍政権が意図する方針、たとえば安保法案の強行採決などに対し、陛下が強い懸念を表明されたものだと私は思います」

 昨今の政治状況に対しての危惧を、政治的な発言が許されない「象徴天皇」という立場ながら、ギリギリ許されるおことばを述べられることに、これまでにない緊張感があったのではないだろうか。

 追悼式典の前日、安倍首相は戦後70年談話、いわゆる「安倍談話」を発表した。安倍首相はもともと、安倍談話によって戦後日本の歴史認識を転換すべく、「(過去の談話と)同じことをいうなら出す必要はない」と意気込んでいた。ところが、いざ明かされた内容は、戦後50年の「村山談話」、60年の「小泉談話」を継承するもので、当初は言及しないと目されていた「植民地支配」「侵略」「反省」「おわび」などの文言も盛り込まれたものだった。官邸関係者が言う。

「方針転換の一因には、最近の両陛下のご動向を安倍首相がしきりに気にしていたことがあります。両陛下が慰霊の旅や平和への祈りを精力的に続けられてきたことを安倍首相はもちろん知っていますし、陛下に負けないほど強い思いを美智子さまがお持ちになっていることも理解しています。両陛下の平和への強い思いに首相の心が動かされたのかもしれません」

 そして、安倍談話を巡っては、こんな話も浮上していた。

「追悼式典のおことばとは別に、陛下が戦後70年に際しての“天皇談話”を発表されるという噂が、官邸周辺でまことしやかに流れました。その内容は、戦争の反省と平和を強く訴えるものだと囁かれました。安倍首相はその内容を非常に気にしていました。自身の談話が村山・小泉両談話とは一線を画し、戦争の反省一辺倒から離れた談話を出したいと考えていただけに、もしその天皇談話が発表された場合、自身の談話の内容と乖離しているのには問題があると考えてもおかしくなかったんです」(官邸関係者)

※女性セブン2015年9月3日号

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン