立命館大学教授の常世田良教授が言う。

「寄贈される本は、大切な本や面白い本ではなく、30年前の大学の教科書とか古い百科事典とか、持ち主のかたが“不要だけど、本は大切だし捨てるには忍びない…”と、捨てきれない本のことが多い。そうした本のなかには、日焼けしていたり、虫の糞がついていたりするものもある。

 また、科学技術や法律、社会問題に関連する本はあまりにも古い場合は、使えません。さらに、いただいた本であっても、それを図書館に並べるためには、表面をコーティングしたりラベルを貼るなど、1冊あたり300円くらいコストがかかります。また、図書館の人員削減の問題で、本を見分けられる司書さんがいない図書館もあって、貴重な本なのに、古いからという理由で捨てられてしまうケースもあるなど、寄贈には多くの問題が含まれています」

 そうした問題を防ぐため、寄贈を全面的に断っている図書館もあれば、出版から年数が経っていない本や、人気のある本など条件をつけている図書館もある。

 寄贈については、ベストセラー本を寄贈によって揃えようとする図書館に対して、作家や出版社を圧迫しているとの批判もある。この批判に、前出・猪谷さんは利用者側にも問題があると指摘する。

「『この本を寄贈してください』と名指ししている図書館には、すでに何十人、何百人も予約待ちの利用者がいます。現場では、利用者から『なぜもっと本を買わないんだ。おれの税金だろう』、とクレームを言われてしまう。でも購入する予算はないし、複数冊買うと民業圧迫になるという批判が根強い。だったら読み終わった本を寄贈していただくというのは苦肉の策なんです。本来は、利用者が予約で図書館に行列を作らず、書店に行っていただければ解決する話です」

※女性セブン2015年9月10日号

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